筆者の住むNYの街中でもIoT化が進む。写真はバスの到着時間や位置情報を伝える電光掲示板
ここ数年、多くのメディアが「IoT」という言葉を取り上げるようになり、世間一般にもその概念が定着しつつある。
IoTとは、「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット化」と定義されている。つまり、今までは主にパソコンや携帯電話、プリンタ等の通信機器同士のみが接続されていたネットワークに、あらゆる「モノ」までをも繋ごうとするものだ。
筆者が個人的にこのIoTを初めて強く意識したのは、家電製品製造・販売会社の象印が2001年に開始した「みまもりほっとライン」の存在を知った時だ。同社は、まだ世にIoTの言葉も浸透していない頃から、高齢者が毎日お茶を飲む習慣を利用し、電気ポット(商品名:iポット)を使うと、離れて暮らす親族などの携帯にメールが届くという安否確認サービスを展開している。このCMを見た時、高齢者をよくぞここまでさりげなく“ネットの世界”へ巻き込んだな、と感心したものだ。
IoTの概念は、実は1990年ごろからすでに議論されていた。それがここ数年で急速に広まったのは、スマートフォンの普及と、センサーの低価格化・小型化によって、普及環境が整ったためだ。
その後、IoTに関わる開発や商品化は多くの分野で進み、今や家電や自動車はもちろん、施設や生き物などといった「ありとあらゆるモノ」が、今までにない“スマート化”という付加価値をつけ、我々の生活に溶け込んでいる。
総務省がまとめた最新の平成29年版「情報通信白書」の統計によると、インターネットに繋がるモノの数は2016年の時点ですでに173億個も世に存在し、2020年には300億個にまでなると推測されている。こういったIoT化やそれに伴う企業改革が進展した場合、日本の実質GDPは、2030年までに132兆円押し上がり、39%増の725兆円になる見通しだ。
当然このIoTの大風は、日本の製造業界にも吹き始めている。最もポテンシャルのある市場の1つと言っていい。しかし製造現場である工場のIoT化や、その取り組み方は、日本と肩を並べるモノづくり大国のドイツやIT先進国のアメリカと比べると、残念ながら大きく出遅れているのが現状だ。
前回は町工場のIT化の遅れについて紹介したが、今回は、筆者が数多くのモノづくりの現場で感じた「日本の製造業がIoT化に遅れを取っている理由」と、各国の取り組み方の差を挙げてみよう。