ウイダーinゼリーの投票キャンペーンで起きた大いなる悪ノリを、主催者は予想できなかったのか

瞬く間に「祭り」の標的に

 そんなキャンペーンに異変が起こったのは、6月の中旬。  毎日更新されるランキングで1位を「独走」していた北海道のS高校の吹奏楽部の得票数が異常に多いのではと、ネット上で話題になり、一部のネット民からは「不正投票だ!」、「不正投票許すまじ!」の声が上がり始める。  そんな一部のネット民たちは、どうにかこのS高校を追い落とすため、或る悪戯を思いつく。それは、別の高校の別の部に票を集中させ、ネット民の力で1位を奪い取ろうとするもの。彼らは、某有名ユーチューバーのS氏の母校である、大阪・M高校の放送部に目を付けた。そして、ネット掲示板を通じて、M高校への投票を大々的に呼びかけたのだ。最初は、その悪戯に呼応する人は僅かだったが、一日二日経つと、ネット民の中でこの悪戯が話題になり始め、M高校に投票する人が増え始める。  そしてそれはいつしかネット上の「祭り」となった。  そこに「1日1クリック」のルールはない。或る方法を取れば、1日に1人が何回でも投票できる「裏技」も公開された。M高校放送部への投票が爆発的に伸びる。そしてキャンペーンの最終週には、彼らの思惑通り、M高校放送部が圧倒的な1位に躍り出た。  アメリカ・タイム誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」のネット投票で、不祥事を起こした時の芸能人が、2位のビン・ラディンに2倍の大差をつけ1位になったり、2016年の「妖怪ウォッチ」のキャラクター人気投票で、主催者側が冗談のつもりで選択肢に入れた「三兆円」(番組のキャラではない)が優勝し、運営会社であるレベルファイブが辛酸をなめたり、ネット上では、ネット民たちの悪ふざけにより時々このような「事件」が起きる。  今回の、ウイダーinゼリーの部活応援キャンペーンも、その悪戯の標的となってしまった。
次のページ
不正投票合戦で無関係の高校が担ぎ上げられる
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会