超小型衛星の一例。1辺が10cmで、質量はわずか1kgしかない。立方体の形をしていることから「キューブサット」と呼ばれる Image Credit: NASA
このような小さなロケットを開発しているのはロケット・ラボだけではない。
たとえばヴァージン・グループが立ち上げた米国のヴァージン・オービット、長年小型ロケットを開発していたメンバーが立ち上げた米国のヴェクター・スペース・システムズなど、世界中のさまざまな民間企業や団体によって開発が進められている。
日本でも、堀江貴文氏や若手の技術者らが立ち上げた日本のインターステラテクノロジズがこうしたロケットの開発を進めており、近々宇宙空間に届くロケットの打ち上げに挑む予定で、さらに小型・超小型衛星を打ち上げられるロケットの開発も進めている。
今後、エレクトロンの運用が軌道に乗れば、さらに他の企業も同様のロケットの開発に成功し、世界中でいくつもの安価で手頃な超小型ロケットができれば、小型・超小型衛星を使った宇宙利用は大きく前進するかもしれない。
すでに米国を中心に、世界中で超小型衛星を複数打ち上げて地球観測や通信などをおこなおうとしている企業が出てきており、中には運用が始まっているものもある。日本でもキヤノンが衛星事業に乗り出し、6月にも最初の衛星が打ち上げられる予定となっているが、こうした動きがさらに加速し、世界中のあらゆる国でさまざまな宇宙企業が誕生し、宇宙利用が実現するようになるだろう。
また、直接的な産業利用だけでなく、たとえば新しい部品や技術を試すためのちょっとした試験衛星を打ち上げたり、学生による衛星開発がさらに活発になったりすれば、将来的に大きなリターンが見込める。さらに、今はまだ誰も思いついていないような、まったく新しい宇宙利用の形が生まれることも期待できる。あるいは人工衛星でレースをするような、遊びやスポーツへの展開も考えられるだろう。
もちろん、エレクトロンのような超小型ロケットが登場したからといって、すぐにそのような薔薇色の未来が訪れると考えるのは楽観的すぎるかもしれない。しかし、小型・超衛星のブームは、打ち上げ手段が限られていることから頭打ちになっているのは事実であり、超小型ロケットによる手頃な打ち上げ手段の実現は、小型・超小型衛星の未来を拓くために必要不可欠であり、多くの可能性が秘められているのは間違いない。宇宙の海は、まさに“ブルー・オーシャン”なのである。
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・Rocket Lab successfully makes it to space | Rocket Lab(
https://www.rocketlabusa.com/latest/rocket-lab-successfully-makes-it-to-space-2/)
・Rocket Lab | Electron – satellite launch vehicle | Rocket Lab(
https://www.rocketlabusa.com/electron/)
・Rocket Lab | About Us | Rocket Lab(
https://www.rocketlabusa.com/about-us/)
・Maiden flight of Rocket Lab’s small satellite launcher reaches space – Spaceflight Now(
https://spaceflightnow.com/2017/05/25/maiden-flight-of-rocket-labs-small-satellite-launcher-reaches-space/)
・Rocket Lab reaches space, but not orbit, on first Electron launch – SpaceNews.com(
http://spacenews.com/rocket-lab-reaches-space-but-not-orbit-on-first-electron-launch/)