繰り返しになるが、職人には男性が多い。これは日本に限ったことではないようで、筆者の周りにいる約15か国の外国人に聞いてみたところ、女性職人はやはり世界的にも圧倒的に数が少ない。
さらに業種も様々で、父の工場のような製造の世界だけではなく、寿司職人、パティシエ、左官、伝統工芸品などの職人も、その多くが男性である。女性が比較的得意とする料理の分野ならば、女性がもっといてもおかしくないと思うところ、どうしてこうも女性職人が少ないのか。
各分野の職人を調べて分かった、その最大の理由は、「今までずっと男社会だったから」という、身も蓋もない答えだったりするのだが、そこには
1.今から女性を受け入れようとしても、女性向けの道具や設備が整っていないため、入る隙がない
2.今その世界を支えているのがプライドの高い男性職人であるゆえ、女人禁制という固定観念から抜け出せない
といった、付随的要因が広がっている。
そもそも職人の仕事は、重労働であることが多い。立ちっぱなし、座りっぱなしで黙々と作業することの多い仕事だが、同じ作業を同じ体勢で続けるのは、想像以上にハードだ。筆者の利き手の左中指は、外を向くように曲がっている。全体重をこの指に乗せ、ペーパーやすりで1日中金型を磨いていた結果なのだが、男性より指が細いため、伝わる力も大きかったのだろう。30年磨いてきた父親の指よりも大きく、かつ早く曲がった。
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曲がったままの左中指。当時はネイルもできず、常に油にまみれていた
また、作業の工程でどうしても必要となる回転工具においては、一人前の男性職人であっても、気を抜けばその分、危険に身を晒すことになるところ、力の弱い女性が扱えばその大きな動力に負け、怪我をするリスクもより高くなる。
さらに職人という仕事は、業種に限らず一人前になるまでにかなりの時間が必要になってくる。負けん気の強い筆者にとって、これを認めるのは大変悔しいが、この長い期間に安定した時間と体調を保てるのは、やはり男性の方が圧倒的に有利なのだ。
妊娠・出産など、体に負担が掛けられないライフイベントの多い女性には、技術習得までに年単位かかる職人の仕事は、やはり「仕事と家庭のどちらかを取るか」という選択が避けられないのかもしれない。