日本だけではなかった。女性が“職人”に向いていない理由

橋本愛喜

回転工具を使用する筆者。重いうえに遠心力がかかり、気を抜くと大怪我をする

 家業の工場を手伝いながら、日本の技術の尊さ、工場職人やドライバーの日々の苦労を身近に感じてきた筆者。これまで二回に渡って工場職人の実情を述べてきたが、最後になぜ職人には女性が少ないのかを考えてみたい。

 筆者の通っていた中学校は女子校だった。

 周りにいる男性は、先生か守衛のおじいちゃんくらいで、休み時間になると、前日撮ったプリクラの交換や、音楽番組に出ていたアイドルグループの話で「かわいい」「かっこいい」が飛び交う世界だった。

 それが何を血迷ったか、進学したのは共学1年目の元男子高校で、45人いたクラスメイトのうち、女子は筆者含めて2人のみ。ゆえに当初は面白いほど勉強がはかどらなかったが、卒業するころには見事に”オス化”し、女子校で培った「しとやかさ」は見る影もなくなった。

 おかげで大学時代の親友も男性。毎日一緒にいる女友達も、竹を割ったような性格の子ばかりで、幼少から続けてきたテニスの試合では、小さいものならば無理言って男子でエントリーさせてもらうほど、強情で負けん気が強く、巷で言う“理想の女像”に逆行する全く可愛くない性格ができあがり、今に至る。

 しかし、この流れと性格がなければ、おそらくあの工場の経営は困難だっただろう。

 前回までに述べた通り、工場にいた職人34人は全員「オレの道」なるものをもつ堅物の男性だった。元々人の言うことをなかなか聞き入れてくれない彼らだったが、ましてや相手が女性となると、「女のあなたに何が分かるんですか」と、意思疎通の難しさはさらに増す。

 さらに、赴いた取引先の工場に至っては、筆者よりも経験の浅い担当者に「女性には難しい話なので、男性の営業さんに来てもらってもいいですか」と言われることもあった。

 そんな彼らとともに仕事をするには、体力以上に、誰に何を言われても動じない精神力と、女性でもできると証明する説得力が必要だったため、仕事上で性別を武器にしたことは今まで一度たりともない。筆者が大型免許を取り、現場で職人の作業をしたのは、人手が足りないからというよりもまず、彼らとの垣根を少しでも低くしたかったという思いからだった。

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世界的に女性の職人が少ない理由

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