ブラジル食肉不正発覚で、その座を虎視眈々と狙う国は…?

「漁夫の利」を得に走るのはあの国

 この災難を市場回復の絶好の機会と見ているのがアルゼンチンの食肉輸出業者である。アルゼンチンの過去の栄光を多少とも夢見る機会の到来と見ているのである。  それは1920年代まで遡る。当時のアルゼンチンはブラジルを遥かに凌ぐ穀物と食肉の輸出国であった。食肉の場合は、当時、冷凍船によってヨーロッパへ盛んに輸出していた。食糧の宝庫であったアルゼンチンは輸出の伸展によって、ラテンアメリカのGDPの50%を担うほどに成長したのであった。当時のアルゼンチンは世界で最も豊かな10か国の一角を占め、国民一人当たりの所得では、米国に次ぐ2番目に豊かな国であった。30年代には米国、カナダ、オーストラリア、アルゼンチンが世界でもっとも豊かな国となっていた。しかしながら、現在のアルゼンチンはGDPで世界59位まで落ちている。  かように、食肉の輸出で世界をリードしたアルゼンチンが後退したのは理由がある。それは、政府が余りにも市場に干渉し過ぎたことと、賄賂の横行であった。  政府による市場介入はクリスチーナ・フェルナンデス前大統領の時もそうであった。例えば、インフレによる肉の価格が値上がりするのを抑える為に、彼女は輸出に規制を加えて国内市場で肉の供給過剰を誘発させて価格を下げようとしたのであった。  これなどは、市場経済の原理を全く無視した政策で問題が起きるのは当然であった。それを、フェルナンデス前大統領の政権時に実施したのであった。その影響で、アルゼンチンの食肉輸出業者は外国での市場を失った。その失った市場に割り込んだのがブラジルの輸出業者で、見事に覇権を奪ったのであった。  アルゼンチンとブラジルは隣国同士で、両国ともメルコスルの加盟国でもある。しかし、ビジネスはビジネス。凋落していたアルゼンチンの食肉輸出業者は、ブラジルの災難を奇貨として<今後50%の輸出の増加>を目論んでいるのである。<「昨年は27万トンの肉を輸出したが、今年は40万トンまで輸出できる体制にある」>と関係官僚は述べている。因みに、ブラジルは年間140万トン輸出している。  現在のアルゼンチンの牧畜業の飼育頭数は、ブラジルの<2億1900万頭に比較して、5300万頭>しかない。<ブラジルが150か国に輸出>しているのに対し、<アルゼンチンは58か国>に輸出しているだけである。(参照:「iProfesional」)
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ブラジルの穴を狙う国々
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