元女性トラック運転手の筆者が主張。長距離ドライバーにふりかかる理不尽な現実

ドライバーの過酷過ぎる労働条件

 トラックによる貨物輸送は、日本国内の物流の約9割を占める。その他の鉄道、航空輸送手段でも、末端輸送は結局のところトラックが大半を担っており、まさしく日本経済の血液として、日々隅々に「栄養」を行き届けている。当然、そのトラックを運転しているのは人間だ。  先日、ヤマト運輸が宅配運賃の値上げを発表した。  全面値上げは、消費税の増税時を除けば27年ぶりのことだ。この主な要因は、ドライバーの過重労働である。  大手インターネット販売会社の普及により、ドライバーがサービス残業を強いられている現状。これを打開するには、やはり値上げは避けられなかったのだろう。それでも大手はまだいいほうで、運送業界には多くの下請けがおり、そのさらに下の孫請けは第7次まで存在するとも言われている。下にいけばいくほど運賃はピンハネされ、末端の業者は、高い燃料と高速料金を支払えば、もう何も残らない。  彼らトラックドライバーには低学歴の男性が多く、腕一本で家族を養うには都合がいい。が、いいのは都合だけで、仕事は3K(きつい、汚い、危険)。過酷を極める。  彼らの仕事の中で一番重要なのは、「時間厳守」だ。たとえ途中、渋滞があろうが台風が来ようが、取引先が指定した時刻は守らなければならない。延着(指定の時間に遅刻すること)は、ドライバーにとって最も恥ずべきことで、会社にも大きなダメージとなる。時には契約解除、損害賠償を請求されることも少なくない。

ドライバーのおっちゃんに歯がなかった理由

筆者の免許証

 なのにだ。2004年には大型自動車にスピードリミッターの装着が義務付けられ、最大時速が90キロまでしか出せなくなった。大型車が追い越し車線でノロノロと走っているのは、そう走りたくて走っているのではない。「走れない」のである。 「遅れるな。でも、スピードは出すな」で、唯一削れるといえば、ドライバーの休憩時間だ。4時間につき30分休憩を取らなければならないという法律はあれど、これを守れるドライバーはごく一部で、延着を出さないためにと10時間以上休まず、ペットボトルに用を足しながら運転するドライバーも数多くいる。  ようやくできた僅かな休憩時間も、車内で仮眠。食事も、眠くなるので腹いっぱいは食べない。家には2週間以上帰れないこともザラであるゆえ、毎食コンビニのおにぎりと缶コーヒーで腹虫を泣き止ます。こんなギリギリの状況下、歯なんて磨いている余裕もあるはずなく、例のおっちゃんに前歯がないことは、決して笑い話なだけではないのだ。
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ドライバーの孤独な戦いを支えているのは……
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