日本人がプライバシー権を勘違いしている限り、働き方改革は成功しない

「働き方改革」に欠けていること

 ワークとライフのバランスを自分で決められることがプライバシーの権利なら、働き方改革は、これを無視してはならない。政府の大号令のもと、全社17時強制退社というのは、プライバシーの本質を完全に無視していると思う。 「会社にいなくてはいけない」雰囲気は間違っている。だけど、「会社にいちゃいけない」法律も、同じように間違っているのだ。極端な長時間労働から、極端な長時間労働嫌悪に流れるのではなくて、その間で、個人が自分に合った働き方を見つけられるようにならなければならない。長らく個人の自己決定権を無視して、長時間労働を強いてきた日本社会の問題の本質に、今、向き合わなければならない。人と違った人生を歩む権利を尊重する——これを、少しずつ社会の中に根付かせていかなければならない。  自分で選んだ結果、みんなが今よりも早く帰って、家庭で多くの時間を過ごすようになれば、それはいいことだ思う。大事なことは、個人が納得して自分で選んだということだ。なんとなくみんなが残っているから残業するわけではない、政府が号令をかけるから早く帰るわけでもない。誰かに決められるのではなく、自分の人生を自分で選び取るプライバシーの観点を、働き方改革から抜かしてはならない。 <文/山口真由> 1983年、札幌市生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験、国家公務員Ⅰ種に合格。全科目「優」の成績で2006年に首席卒業。財務省勤務を経て、弁護士として活動したのち、2015年夏からハーバード大学ロースクールに留学。2016年に卒業し、帰国。ハーバードで学んだことを綴った最新刊『ハーバードで喝采された日本の「強み」』(扶桑社)が発売中。
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