三越伊勢丹HD社長、突然の退任劇――爆買い失速、免税店失敗……今後の新たな一手とは?

「コト消費」重視への転換で脱インバウンドを狙う

 一方で、三越伊勢丹ホールディングスもこうした事態に対して何の対策も取っていないという訳ではない。  前述したCCC(TSUTAYA)との提携以外にも、2016年1月には飲食店を展開する「トランジットジェネラルオフィス」(港区)との共同出資で「三越伊勢丹トランジット」を設立。百貨店内の飲食店街の活性化や店舗外での展開も視野に入れているほか、2016年11月には人気のオンラインゲーム「艦隊これくしょん」とのコラボレーションを実施。さらに2017年1月にエステサロンなどを運営するソシエ・ワールドの持株会社「SWPホールディングス」(千代田区)を、2月には主に富裕層をターゲットとした旅行会社「ニッコウトラベル」(中央区)を買収するなど、今後は高級品や贈答品の販売のみに注力を注ぐのではなく「コト消費」にも重点を置くことで郊外型ショッピングセンターなどとの差別化を進め、客層の拡大や経営の改善を図る考えだ。  また、旗艦店の日本橋三越本店でも、環境デザイン担当に建築家の隈研吾氏を機用して「カルチャーリゾート百貨店」をテーマとした全面改装を進めていくことを発表している。  今後、新社長の下では、どのような「活性化策」が採られるのであろうか。百貨店の雄・三越伊勢丹だけに、その後継者や経営方針は百貨店業界全体からの注目の的となっている。

2020年の完成を目指して大きく生まれ変わる日本橋三越本店の改装イメージ(プレスリリースより)

<取材・文・撮影/都市商業研究所都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」 ※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中 ・ニトリ渋谷店、2017年6月ごろ開店-丸井・シダックス跡に「都心初」単独旗艦店ライザップ、ジーンズメイトを子会社化北千住マルイ、12月9日リニューアルオープン――レストラン街など全69店舗を刷新
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