三越伊勢丹HD社長、突然の退任劇――爆買い失速、免税店失敗……今後の新たな一手とは?

鳴り物入りで改行した免税店の不振

銀座三越

 銀座三越の8階は、2016年1月に全面リモデルされて空港型免税店「Japan Duty Free GINZA」となったばかり。この「Japan Duty Free GINZA」は、三越伊勢丹グループ初の空港型免税店で、3,000㎡の売場面積に化粧品、宝飾品に加えてこだわりの伝統工芸品など約130ブランドを展開。初年度の売上目標を133億円とし、将来的には150億円を目指すとされていた。  しかし、高級感にあふれる売場は閑古鳥が鳴く状態で、客よりも店員の数のほうが多い、という日も少なくない。

高級感あふれる「Japan Duty Free GINZA」の店内イメージ(公式サイトより)

 ここで、最近全国各地でよく聞くようになった「空港型免税店」とは何か、について確認しておきたい。  空港型免税店とは、既存の百貨店などに適応されている消費税分のみが免税される免税店(TAX-FREE SHOP)と異なり、関税や酒税・タバコ税も優遇される空港型市中免税店(DUTY-FREE SHOP)のことだ。銀座三越の空港型免税店開設は、国内では沖縄型特定免税店制度により2002年に開設された「Tギャラリア沖縄 by DFS」以来13年ぶりとなったため、開業時には大きな注目を浴びた。  訪日観光客が増加するなか鳴り物入りで開業した「Japan Duty Free GINZA」の苦戦は、訪日客のいわゆる「爆買い」傾向の変化や店舗のPR不足に加えて、「いかにも『外国人向け』の作られた売場ではなく、日本人向けの売場と接客のなかで買い物をしたい」という訪日客のニーズとは異なった売場づくりだったことも大きな要因となっていたであろう。  さらに「Japan Duty Free GINZA」では、客のうち2~4割程度が「出国前の日本人」になると想定していたというが、店内はとても出国前にカジュアルな服装で買い物できる雰囲気ではないうえに、まず出国前の日本人がわざわざ銀座三越の8階で買い物をするメリットはあまり高くなく、日本人の買い物は非常に少なかったと思われる。  「Japan Duty Free GINZA」の初年度の売上は、目標の3割ほどの44億円。営業損益は20億円の赤字になったという。
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地方店を支える大黒柱を失う
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