予測から約80年が経った2016年10月、ハーバード大学の物理学者Isaac Silvera氏とRanga Dias氏は、このために開発された特殊な万力のような装置を使って、水素分子に495GPa(ギガ・パスカル)という圧力をかけることに成功した。495GPaというと私たちの周囲の大気の圧力(1気圧)の約490万倍で、地球の中心にかかっている圧力よりも高い、とてつもないものである。
そしてその結果、装置の中の水素が金属のような光沢を放つようになり、その反射率から計算した結果、理論的な金属水素の性質と一致したことを確認。研究チームは金属水素が現れたと結論付け、その結果が論文にまとめられ、今回『Science』に掲載された。
Science誌は世界で最も権威ある科学論文誌の一つで、論文が掲載されるために必要な検証作業も厳しい。それを経て今回の論文が掲載されたということは、第三者からも「確からしい」という判断が下された、ということになる。
ただし、今回生成されたものが本当に金属水素なのかどうかは、まだわからない。現時点で実験は1回しか行われておらず、また生成された金属水素と思われる物体もまだ装置の中にあるため、取り出して、見て触って金属かどうか確かめられたわけでもない。生成方法や、金属かどうかの検証方法にも疑問の声が出ている。もっとも、このことは論文を発表したチームも当然認識しており、今後さらなる研究を続けることや、他の研究者による検証を望むことを表明している。
したがって、本当に固体金属水素が作り出されたのかどうかに結論を下すためには、さらなる実験や、他の研究機関による実験や分析(追試)などを待たなければならない。