<問題だらけの沖縄県鉄道建設構想>県知事選では全候補が推進派
⇒【後編】へ続く『鉄道技術専門誌の編集者は「技術的な観点からも問題だらけ」と語る』 https://hbol.jp/13095
<取材・文・撮影/境正雄(鉄道ジャーナリスト)>
16日に県知事選挙を控えた鉄道不毛の地・沖縄に、ついに本格的な鉄道路線が誕生するかもしれない。
現在、沖縄県の鉄道は那覇空港~首里を結ぶ沖縄都市モノレール(ゆいレール)のみ。しかし、知事選では、4候補者がいずれも沖縄本島南北縦貫鉄道(那覇から普天間基地跡地を通って名護まで向かう路線)の建設を公約に掲げているのだ。そして、地元紙をはじめとするメディア各社も「ついに県民の悲願が叶う」と好意的な受け止め方。基地問題では県を二分して論争が繰り広げられている沖縄だが、鉄道建設の望む点では右も左も一致しているようだ。
しかし、こうした風潮に疑問を呈する声がないわけではない。沖縄県出身の30代男性I氏は言う。
「鉄道ができれば嬉しいのは事実です。でも、だからといって乗るかどうかとなると別問題だと思います。何しろ、マイカーで移動するという生活スタイルが完全に根付いていますからね。寄り道もできずに駅から目的地まで歩く必要もある鉄道が便利なものだと受け入れられる可能性は低いんじゃないでしょうか」
こうした状況は本州のローカル線でも見られる。今春震災被害からの全線復旧を果たした三陸鉄道でも、復旧を祝う地元住民に話を聞くと「シンボルだから復旧は嬉しいけれど実際に乗る機会はほとんどない」といった答えが帰ってきたほどだ。特に沖縄は路線バスすらも大赤字を抱えて年々路線の縮小が進むほど、マイカーへの依存度が高い。
となると、南北縦貫鉄道は年間600万人が訪れるという観光客のニーズを当て込んでのもの……と思いきや、現在県が検討している計画では観光需要は重視していないのだ。
沖縄県は、2013年3月に鉄道建設に関する構想を発表している。詳細な路線案から採用する方式、運賃までに踏み込んだかなり具体的なものだ。それによると、観光客の利用は県民の利用と比べて15分の1程度にしか見込んでいない。つまり、県の構想では観光需要ではなく地元県民の利用に頼った運営を考えているということになる。それでは採算性が充分なのか、大いに疑問が残るところだ。
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