中雄さんが出品した自転車。ラグ(フレームの白い部分)が開発途中だ
手作り自転車で主に使われる素材は鉄だ。鋼管を組み合わせて作られるフレーム(車体)は、アルミやカーボンと比べて軽さで劣るものの、細身の造形が際立つ。そのシルエットの美しさから、鉄フレームを好む人もいる。
「(鉄フレームの)細さに魅力を感じています。カーボンではなく鉄で造形の可能性を広げたい」。展示会に鉄製フレーム自転車のプロトタイプを出品した、九州大4年の中雄雅俊さんは話す。
炭素繊維を樹脂で固めて作るカーボンフレームは、造形の自由度が高い。しかし軽さや強度を追求する上では、鉄フレームのような細身の造形は望みにくい。一方で鉄フレームも、鋼管をつなげて作る構造上、設計や造形には制約がともなう。
中雄さんは鋼管どうしをつなげる「ラグ」と呼ばれる部品を工夫することで、今までの鉄フレームでは難しかった造形に挑戦したいという。しかし今はまだラグに十分な強度を出せずにいる。
「ラグを開発できれば、ビルダーになりたい気持ちはある」と中雄さん。前出の尾坂さんも、出展ビルダーの中では歴史が比較的若い。こうした「若手」の新規参入は、手作り自転車分野の活気の表れとも見て取れる。
国内最大級の自転車見本市「サイクルモード」では昨年、ツーリング車や手作り自転車などを集めたコーナーが初めて出現。ロードバイクとは異なる自転車の魅力が再び評価されていると言えるだろう。
<取材・文・撮影/斉藤円華>