このように、バンクーバーは多様性を重要視する街だ。たとえば、性的マイノリティの祭典である世界最大級のレインボー・パレードを毎年開催していることにも、それがよく表れている。
そもそも、性的マイノリティの存在感は以前から圧倒的だった。筆者が四半世紀前にカナダ屈指の名門・ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)に留学してまず驚いたのは、大学のサークルの中で最も存在感が強い学内団体のひとつがLGBTサークルだったことだ。日本ではまだ性的マイノリティに関してオープンに議論することすら難しかった時代の話である。
今では、レインボー・パレードはもはやバンクーバーの「プライド」となっており、毎年多くの予算と人員が投入されている。もちろんバンクーバー人はそれに誇りを感じている。
出自や人種、民族、宗教などは、すべての人に備わる「属性」である。同様に、性も人の属性であり、「モザイク」のひとつのピースと考えられる。その色の種類が多ければ多いほど、そして複雑であればあるほど、全体としてのモザイク画は一層美しくなる。自分の性的属性に関わらず、他の性的属性が多様であれば、自分が属する社会はより強くなると考えているのだ。
トルドゥー首相がさも当たり前であるかのように「多様性が私たちの強み」とツイートしたのは、そういう背景があるのだ。
<文・写真/足立力也(コスタリカ研究者。著書に
『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める)>