「世界で最も住みやすい街」コスモポリス・バンクーバー
バンクーバーの目抜き通り、グランビル・ストリート。様々な人種や民族の人びとが行き交う
西海岸最大の都市であるバンクーバーを歩いてみると、その特徴がよく分かる。目抜き通りのグランビル・ストリートでは、多種多様な肌、髪、目の色が違う人たちとすれ違う。そこから少し足を延ばすと、北米有数の規模を誇るチャイナタウンをはじめ、インド系のインディアンタウンや、イタリア系のイタリアンタウンなど、様々なコミュニティがある。
彼らは、互いが「良き隣人」であるために、出自や言語、宗教、文化などによって独自のコミュニティを形成しつつ、ダウンタウンでは皆が混在して社会生活を営んでいる。同じ出自の人たちとのつながりを大切にするが、週末にはピザを食べにイタリアンタウンに行ったり、調味料を仕入れにインディアンタウンに行ったりもする。
そういうスタイルをとることで、自分のアイデンティティは失わず、他人のアイデンティティも尊重できる。無理に同化することもなく共生できる。そこに見られるコスモポリタンな街こそ、彼らが求める平和な社会の姿なのだ。バンクーバーが「世界で最も住みやすい街」と言われるのは、このことと決して無縁ではない。
ちなみに、かつてそこにはジャパニーズタウンも存在したのだが、第二次大戦の煽りを受けて完全になくなってしまった。それは現在でもバンクーバーの「黒歴史」のひとつとして語り継がれている。