これは私の持論だが、参考文献を選ぶときに「身の丈」にあったものを探すことは重要である。
たとえば「鷲の翼に乗って」という本がある。かつてドナルド・トランプの前に大統領選に出馬した米国の大富豪、ロス・ペローの実話である。
部下がイラン革命に巻き込まれて人質となり、身代金を要求されたとき、彼はどうしたか。あろうことか、自社の役員を使って救出部隊を作り、自力で奪還したのだ!
この顛末を英国の人気作家ケン・フォレットが書いたわけだが、確かに読み物としては最高の面白さであり、究極のリーダーシップの教科書である。
しかし、実際の経営では一切役に立たない。当たり前である。一度でも会社勤めをすれば誰でもわかるはずだが、部下は上司のためには死なないのである。社長が「すまん、オレのために死んでくれ」と頼み、「はい、死にます」という男が15人いるというのはどう考えても一般企業にはない話だろう。
同じ意味で、かつて金本知憲・現阪神タイガース監督の「覚悟のすすめ」がベストセラーになったことがあるが、あれが本当にサラリーマンに役立ったのか私はいまだに疑問である。
普通の勤め人は骨折しながら150㎞の球が飛び交う打席に立つ必要はないのだ。だから今の私には五輪代表レベルの選手やコーチの話はたぶん役に立たない。まずサブフォーを達成するまでは宗男先生の教えに従うと私は決めた。