ジョージ・ソロス損失1140億円損失の背景と、ヘッジファンドが今狙っていること

海外ヘッジファンドのコンセンサスは「売り」

 1月12日のトランプ氏の大統領就任直前の記者会見以降、円高が急激に進んだが、同時に「売り目線」に転換しているヘッジファンドも増えているという。日本株を中心にロング・ショート戦略を取るヘッジファンドのファンドマネジャー・A氏が語る。 「ドル建ての日経平均はここ数年、140~160ドルで推移しています。日経平均140ドルで株買い・円売り、160ドルで株売り・円買いのポジションを取ることで利益を生んできました。最近は160ドルをやや上回り、ボックス圏の上限に達している。そのため、売り目線のヘッジファンドが増えています」(A氏)  また、日本ではあまり報道されないが、海外の報道を見ると、多くのファンドマネジャーのコンセンサスは「売り」だという。 「2016年11月以降の円安・ドル高、世界的な株高の背景には、グローバル・マクロ戦略のヘッジファンドの存在があるように思えてならない。トランプ氏や米政権中枢に近いヘッジファンド関係者がトランプ期待から『ドル高・株高』というマクロシナリオを描き、マーケットを動かしてきた感があります。しかし早晩、調整入りするのではないか」(A氏)  シナリオを描き、マーケットを動かすというと陰謀論のようにも聞こえるが、決してそんなことはないという。 「トランプ氏の政権移行チームは、ヘッジファンドのスカイブリッジ・キャピタルの創業者、アンソニー・スカラムッチ氏を顧問に起用し、財務長官にはゴールドマン・サックス出身者が就任、同社COOも要職に就きます」(A氏)

トランプ政権で顧問に就任するアンソニー・スカラムッチ氏。「スカイブリッジ・キャピタル」の創業者でGS出身だ(Photo by Gage Skidmore)

 このようにヘッジファンド関係者が世界経済の中枢に食い込んでおり、数兆~数十兆円を運用するヘッジファンドもある。一日の売買代金が2兆円程度の日本市場なら、思惑で動かすことも不可能ではないという。

1ドル=125円へ。円高は仕込みのチャンス!

 一方で、海外ヘッジファンドとの交流が深い西原宏一氏は「一時的な円高局面はチャンス」と話す。 「2017年に米国が4%の経済成長率を達成できれば、グローバルな資金はさらに米国に向かう。金利も正常化に向かっていて、連続して利上げが予想されているドルが買われるのは自然なことです。短期的な調整をはさみながら、1ドル=125円に向けてドル高・円安トレンドに戻る可能性も十分にあるでしょう」  ドル高・円安なら、基本的には日本株高だ。買い目線と売り目線のどちらのヘッジファンドが勝つか、NYダウ2万ドル突破後のマーケットに注視していきたい。 【田代昌之氏】 マーケットアナリスト。新光証券、シティバンクなどを経て金融情報を発信するフィスコのアナリストに。個別株や全体相場を分析。海外機関投資家、ヘッジファンド事情に詳しい 【西原宏一氏】 CKキャピタル代表取締役。シティバンク為替部門チーフトレーダー、ドイツ銀行ロンドン支店ジャパンデスク・ヘッドなどを歴任。ヘッジファンドとの交流が深く、独自情報網を持つ
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