「同一労働同一賃金」の議論は抜け穴だらけで意味がない!

同一労働同一賃金の議論は、派遣法の騒動の再来だ

 労働者派遣法の専門26業務の定義と範囲の議論と、同一労働同一賃金の定義と範囲の議論は、酷似している。トピックスは異なれど、思考のプロセスと登場人物が類似している。  ましてや、ガイドライン案の当初から、同一労働であっても同一賃金でなくてもよい場合の定義と範囲が示されており、経験的には、同一賃金でなくてもよいケースが多いと思えるのだ。  これで、同一労働同一賃金は促進されるのだろうか。どう考えても、促進されるとは思えない。「国を挙げての取り組みに竿指すのか」とお叱りを受けそうであるが、そうであるからこそ、声を上げずにはおれない

同一パフォーマンス同一賃金の議論をすべき

 そもそも、議論すべきことは、同一労働同一賃金でなくても問題にならない場合と、問題になる場合のガイドラインなのだろうか。同一労働同一賃金は、雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、パフォーマンスを向上させることなのではないだろうか。  だとすれば、同一労働同一賃金のガイドラインは、パフォーマンスの向上という本来目的に役立つとは思えないのだ。なぜ役立つと思えないのかと言えば、同一労働同一賃金の議論が、同一労働の結果もたらされる同一パフォーマンスに同一賃金を支払うという観点が抜け落ちているからだ。ビジネスパーソンであれば当たり前に受け止めるであろう、同一パフォーマンス同一賃金であってこそ、均等・均衡待遇を確保できるにもかかわらず、そのことが、すっぽりと抜け落ちている。  働き方改革を推進する今こそ、パフォーマンス向上のための方策を議論し、推進していかなければならない好機であるにもかかわらず、その議論がまたもや忘れられている。  同一労働同一賃金のガイドラインに対する危惧は、ガイドラインの抜け穴の問題もさることながら、同一パフォーマンス同一賃金の問題が議論されないことにあるのだ。 ※「パフォーマンス向上の手法」は、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月。ビジネス書ランキング:2016年12月丸善名古屋本店1位、紀伊國屋書店大手町ビル店1位、丸善丸の内本店3位)で、セルフトレーニングできます。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第24回】 <文/山口博> 【山口 博(やまぐち・ひろし)】株式会社リブ・コンサルティング 組織開発コンサルティング事業部長。さまざまな企業の人材育成・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある ※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。
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