こうしてファルコン9は、1月15日2時54分39秒(日本時間)に、米国カリフォルニア州にあるヴァンデンバーグ空軍基地の発射台から打ち上げられた。ロケットは順調に飛行し、搭載していた米国の衛星通信会社イリジウムの通信衛星「イリジウムNEXT」10機すべての軌道投入に成功。さらに恒例のロケット機体の回収にも成功し、事故後初にして4か月ぶりとなる打ち上げを、完璧な成功で飾った。
しかし、ファルコン9の試練はまだこれからも続く。もともとスペースXは、ファルコン9の低価格を武器にして、さまざまな企業や機関から人工衛星の打ち上げ受注を取っていた。そのため50機ほどの衛星が打ち上げ待ちの状態にあり、さらに昨年9月の事故によって打ち上げが止まっていたため、スペースXはとにかくできる限り早いサイクルで打ち上げを繰り返し、このバックオーダーを処理していかなくてはならない。
昨年9月の事故以来、4か月ぶりの打ち上げに成功した「ファルコン9」 Image Credit: SpaceX
スペースXは正確な打ち上げ計画表を公表していないが、2017年だけでも20機以上の打ち上げを行うとしており、つまり1か月に2機、あるいは2週間に1機という高い頻度での打ち上げを続けることになる。すでに1月26日ごろには、次のファルコン9の打ち上げが予定されている。事故で破壊された発射台はまだ復旧していないが、事故前から建設していた別の発射台を使うなどして、この連続打ち上げをこなしていく。
また、昨年の事故によってロケットとスペースXという企業双方への信頼が低下したことは否めない。たとえば過去にスペースXに打ち上げを発注したことがある日本や米国の衛星通信会社は最近、新しい人工衛星の打ち上げを、欧州の別の会社であるアリアンスペースに発注している。もちろん、顧客が離れた理由はこの事故だけではないかもしれないが、いずれにせよ、スペースXは今年、とにかく打ち上げを連続して成功させ続け、信頼を取り戻していかなくてはならない。
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●作家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『
イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
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【参考】
・Iridium-1 Mission in Photos | SpaceX(
http://www.spacex.com/news/2017/01/14/iridium-1-mission-photos)
・Spacex Iridium1 Press Kit(
http://www.spacex.com/sites/spacex/files/spacex_iridium1_press_kit.pdf)
・IRIDIUM-1 MISSION | SpaceX(
http://www.spacex.com/webcast)
・Launch Manifest | SpaceX(
http://www.spacex.com/missions)