NASA、日本が一番乗りするはずだった「木星の小惑星」に探査機打ち上げへ
しかし、この木星トロヤ群小惑星がどうやってできたのかは謎につつまれている。かつては、太陽系ができたころに、木星やその衛星になりきれなかった残骸がその正体だと考えられていたが、それでは説明できないことも多く、仮説として不完全だった。
木星トロヤ群の小惑星は、これまで地上や宇宙にある望遠鏡などでしか観測されたことがなく、探査機が訪れたことはない。その人類未踏の地に挑むのが「ルーシー」である。
ルーシーの打ち上げは2021年10月の予定で、まず途中で通過するメインベルトにある小惑星の一つを観測する。そして2027年8月に木星圏に到着。そこから約6年をかけて、合計6つの木星トロヤ群小惑星のそばを通って探査を行う。この6つの小惑星は、それぞれ形や大きさ、種類がまちまちで、木星トロヤ群にある小惑星のさまざまな姿を見ることができる。
また、かつて木星より遠くへ行く探査機の多くには、原子力電池が搭載されていたが、ルーシーは太陽電池のみを搭載する。原子力電池は正式には「放射性同位体熱電気転換器」といい、搭載しているプルトニウム238が崩壊するときに出る熱を利用して発電する。
木星より遠くの宇宙空間では、太陽からの光も弱くなるため、太陽電池では十分な発電量が得られない。そこで太陽光に頼らず発電できる原子力電池が使われていたが、近年、コンピューターなどの省電力化や太陽電池の効率が上がったことなどから、木星までなら辛うじて太陽電池でも行けるようになった(もちろんそれなりに大きな面積の太陽電池が必要にはなる)。
すでにNASAは、太陽電池で動く木星探査機「ジュノー」を運用しており、実績もある技術である。
そして近年になって、太陽系ができた約46億年から数億年後に、木星などの惑星が大移動する出来事があり、その影響で海王星よりも外側にある天体がやってきて、現在の木星トロヤ群の位置に収まった、という説が唱えられ始めた。この説は現在も有力なものとして、研究や改良が続いている。
一方、前回紹介した探査機「サイキ」が目指す小惑星「プシューケー」のような、火星と木星とのあいだの小惑星帯(メインベルト)にある小惑星は、木星の重力の影響で惑星になりきれなかった「幻の惑星」の残骸と考えられている。
そこで、小惑星帯にある小惑星と、木星トロヤ群にある小惑星とを比べることで、本当に木星トロヤ群小惑星は海王星の外側からやってきたものなのか、そして太陽系ができたころの姿はどのようなものだったのかを知ることができると考えられている。
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