貧困や孤独死ではない「幸せな老後」とは? ドキュメンタリー映画『人生フルーツ』が描く人生の境地

不安ばかりを煽る報道に疑問

 建築家・津端修一さん(90歳)と妻の英子さん(87歳)は、高蔵寺ニュータウン(愛知県春日井市)に300坪の土地を買い、木造平屋の家を建てて暮らしていた。庭には木が茂り、畑もある。そこで夫婦は70種の野菜と50種類の果実を育て、収穫したものは英子さんの手で料理や菓子、ジャムなどに変わる。それが実に美味しそうで、夫妻が生活を楽しんでいる様子が伝わってくる。  映像は、そんなしみじみとした日々を淡々と記録している。これまで東海テレビが送り出してきた、硬派なドキュメンタリー作品群とは対極の作風のようにも見える。 「高齢者というと、貧困や孤独死といった辛い現実がまず思い浮かびます。確かにそうした事実はあるけれども、一方でそれらをニュースの定番ネタとして、観る人の不安ばかりを煽るような報道をしてきたメディアの影響もあると思います。でも人が年を取るということは、本当に不安ばかりなのだろうか。そうではない老後、将来の自分の手本となるような、素敵な年のとり方をしている人はいないだろうか……と思ったのが取材の動機です」(伏原さん)  そもそもはフジテレビの「楽しくなければテレビじゃない」というキャッチフレーズに感化されてテレビ放送の世界に入ったという伏原さん。 「世の中の辛いことや苦しいことは避けて通りたい」と思っていたが、異動先の報道部では自身の意に反して、社会の厳しい現実をニュースの題材として扱うことに。社会に影響を与える目的ではあったが、テロップや効果音といった演出を過剰気味に行うこともあったという。 「テレビをつけると重いニュースばかりが流れてきて、『こんな世の中は嫌だな』と思います。けれども、自分もそうしたニュースを発信する担い手になっている現実がある。そこに葛藤がありました。今回は『幸せな老後』がテーマですが、『ウソでしょう?』と思うような、ファンタジー的な作品が作りたかった」(伏原さん)
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戦争、経済成長を経てたどり着いた境地
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