1万人を面談した現役産業医が指摘する「経営者と社員のための長時間労働対策」3つの処方箋

人事評価に生産性向上という質の評価を与える

 2つ目の処方箋は、労働生産性の向上とそれを評価する人事制度です。かなり非情な言い方ですが、長時間労働対策として、残業時間を含めた労働時間を短縮するという内容の議論は多くても、同時に、効率よく働く=生産性を上げることを具体例とともに語る人はあまりいません。厚生労働省や労働監督基準署からも具体的な話がこないところを考えてみると、きっと彼らにもできていないことなのかと推測します。  公益財団法人日本生産性本部の報告によると、日本の労働生産性は、OECD加盟35カ国の中でみると20位で、’70年以来、主要先進7カ国の中では最下位の状況が続いていいます(: 参照)。  労働生産性を上げるために必要な知識やスキルは仕事により異なるでしょう。しかし、労働者それぞれが自分の職場をよく見渡してみれば、労働生産性が高い人は必ずいるはずです。ただ、その人たちは時によっては残業が少なく早く帰る人たちで、“やる気がない”とか“要領がいい”と、ネガティブな評価をされていることもあります。その人たちから“学ぶ”姿勢の企業文化を育むべきでしょう。  ホワイトカラーにおいては今後は特に、同じ「結論や結果」にたどりつく成果ならば、「短時間」でできることをしっかり評価する制度が必要でしょう。つまり、時間あたりの結果を評価するシステムの導入です。  そのためには、結果や成果を見える化することも大切です。なぜならば、長時間労働者の一部には、仕事の結果や成果を周りに”みて”もらえないから長時間オフィスにいることで”やる気を見える(見てもらえる)”化している人たちがいることは否定できないからです。  以上、労働生産性の向上を真剣に考えるのであれば、それを評価するための制度から考える必要があるでしょう。労働を時間で評価するのではなく、時間あたりの結果=質で評価する新しい人事評価制度についての議論をまずは始めてみませんか。
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労働者自身の意識改革も
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