「こうのとり」6号機を載せたH-IIBロケットの打ち上げ Image Credit: JAXA/NASA
「こうのとり」の運用は2009年に始まり、以来1年に1機ほどのペースで打ち上げられ、今回で6機目となった。12月9日に打ち上げられた後、徐々に軌道を変えて国際宇宙ステーションに接近。4日後の13日にステーションに到着した。これから宇宙飛行士によって、中の荷物を取り出す作業と、ステーションで出た廃棄物を積み込む作業が行われる。
国際宇宙ステーションには2017年1月まで滞在し、その後分離され、ステーションで出た廃棄物もろとも、大気圏に再突入して処分される。
1号機以来、基本的に「国際宇宙ステーションに物資を送る届ける」という仕事は変わっていないものの、その物資の中身は毎回変わっており、また運用を重ねる中で改良や最適化が行われたことで、積み込める物資の量も増えるなど、少しずつ進化している。
今回の積み荷の中で最も注目を集めているのは、国際宇宙ステーションで使われる電池である。前述のように、国際宇宙ステーションには巨大な太陽電池が取り付けられているものの、地球の影に入った際には発電できないため、電池から電力を供給しなければならない。
現在、その電池のうち米国側の区画にあるものは、米国製のニッケル水素電池が使われているが、老朽化により新しいものに交換する必要が生じた。そこで選ばれたのが日本製のリチウムイオン電池で、今回の「こうのとり」6号機でその最初のセットが輸送された。今後も「こうのとり」9号機まで毎回輸送され、順次交換される。
このリチウムイオン電池は、ニッケル水素電池に比べて高いエネルギー密度をもっており、現在と同じ能力を、半分の数の電池(48個から24個)で実現することができるという。また長寿命であり、国際宇宙ステーションの運用が終了する2024年まで使い続けることができる。
「こうのとり」6号機に搭載されるリチウムイオン電池 Image Credit: JAXA
さらに「こうのとり」6号機は、国際宇宙ステーションに物資を補給するだけでなく、もう一つ別の重要なミッションも背負っている。それは「導電性テザー実証実験」、通称KITE(カイト)と呼ばれる実験である。
昨今、地球の周囲では「スペース・デブリ」が問題になりつつある。スペース・デブリは、使い古された人工衛星や、人工衛星を打ち上げた際のロケットの残骸、それらから外れたり飛び散ったりした部品など、いわゆる宇宙ゴミのこと。これらは他の人工衛星と同じように、猛スピードで地球の周囲を飛んでいるため、大きなものはもちろん、ネジ一つほどの小さな物体でも、運用中の衛星に衝突すると大事故になる。さらに、衝突によって発生した破片の一つひとつが新しいデブリになってしまうという厄介さもはらんでいる。
地球の周囲にあるスペース・デブリを表した図。ただし地球の大きさに対して一つひとつの点が大きく描かれているので、実際にはこの図のように、地球を覆い尽くすようにあるわけではない Image Credit: JAXA
高度が低ければ、大気との抵抗で比較的早く落下するため大きな問題にはならないが、高い高度にあるものは、何年、何十年も飛び続けることもあるため、何らかの手を打つ必要性が訴えられている。
現時点では、新たに打ち上げる人工衛星に、デブリを発生させないような設計をしたり、人工衛星を打ち上げたロケットをそのまま放置せず、残った燃料などを噴射してなるべく早く地球に落下するような軌道に乗せたりといった対策が行われているが、いずれは、すでに宇宙にある無数のデブリを回収し、処分していくことが必要になってくる。
しかし、デブリは猛スピードで飛んでいるため捕まえにくく、捕まえても軌道を落とすのにエネルギーが必要なため、処分用の宇宙船も巨大になってしまう。衛星の残骸1機を処分するのに、新しい処分用衛星1機を毎回新造していては割に合わない。