ブータンで4G競争が激化。しかしネット普及はブータンにとって諸刃の剣の側面も

ネット普及により生じる懸念

Bhutan Telecomの本社併設直営店に入ると、従業員は当然だが民族衣装を着用する一般顧客も多い

 ブータンではインターネットの普及率が上昇傾向にあることも4Gの競争激化を推し進めた。今や低廉なスマートフォンで高速なインターネットを手軽に楽しめるようになったが、インターネットの普及にはブータンならではの懸念も存在する。  貧困問題を抱えるブータンは国際連合が指定する後発開発途上国から脱却できておらず、最貧国と呼ばれることもある。経済成長を放棄したわけではないが、指標として国内総生産(GDP)ではなく国民総幸福量(GNH)を尊重し、自然や伝統文化の保護と推進を重視するブータン政府としては自然や伝統文化を破壊してまで高度な経済成長は望んでいない。要するに、ブータンは最貧国のひとつでありながら経済成長が最優先ではないのである。  ブータンに滞在してみると確かに自然が豊かで、建物や人々の服装に目を配ると伝統文化を守る姿勢が見て取れた。しかし、これからインターネットの普及で外国の政策や文化に触れる機会が多くなり、情報拡散のペースが加速すれば、若年層を中心にブータン政府の保守的な政策に疑問を覚える者は間違いなく増えるはずだ。  すでにブータンでは貧困など社会に不満を持つ若年層の薬物依存が社会問題とされている。貧困問題が解消されない一方で情報化が急速に進み、薬物依存がさらに深刻化する恐れもある。ブータンでは市街地を含めていたるところに大麻が自生しており、貧困層でも大麻を容易に入手しやすい状況にある。  4Gの競争激化は快適なインターネット接続環境をもたらし、より便利な社会の実現が期待されるが、インターネット接続環境の充実に伴うインターネットの普及はブータン政府にしてみれば諸刃の剣と言えそうだ。 <取材・文・撮影/田村 和輝 Twitter ID:paopao0128
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