「世界王者」のピザハット、国内では劣勢となりつつあった
実は、この「新業態店舗」は、同業他社の大手ピザチェーンに対抗したものだと言える。その「同業他社」とは、急速な出店攻勢をかけるドミノピザだ。
ピザハットの「最大のライバル」であるドミノピザ
日本国内のピザの市場規模はここ10年間以上2000億円台で推移しているのに対し、宅配ピザ店は増加傾向にある。さらに、2008年から2016年までの宅配ピザチェーン国内大手3社の店舗推移を見ると、ピザハット、ピザーラは横ばいなのに対し、ドミノピザの店舗数の伸びが著しいことが分かる。
日本国内でドミノピザを展開する「ドミノ・ピザ ジャパン」社は、2010年にミスタードーナツなどを経営するダスキンの傘下から米国「ドミノ・ピザ」社の筆頭株主である投資ファンド「ベインキャピタル」の傘下となって以降、積極的な出店を開始。2008年に100店舗台だった店舗数は、2016年には500店舗にまで届こうとしている。
この「怒涛の出店攻勢」により、長らく国内業界2位であったピザハットは業界3位へと転落。新たな「一手」を迫られていたのだ。
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図:宅配ピザチェーン大手3社の国内店舗数推移 ピザ協議会ウェブサイト、各社ウェブサイトなどを参照。 末端売上高はピザ協議会調べによる(年度ベース)。 末端売上高は2016年度未発表のため2008年度、2012年度、2015年度の数値
実は、かつてのピザハットの店舗ではこういった飲食コーナーを設けている店舗が多かったものの、その後の宅配ピザの流行により、経営方針を「宅配中心」に転換したという過去がある。
一方で、近年ピザハットは全国のショッピングセンター内に小規模なイートインスペースを併設した「ピザハットエクスプレス」の出店も行っていた。このエクスプレス業態は宅配に要するコストが軽減する分、一般的な宅配ピザと「同じ」商品が割安な価格で購入できるのが特徴であった。今回出店した「ピザハット奏の杜フォルテ津田沼店」は、このエクスプレス業態を進化させ、更なる「商品の低価格化」と「業態の最適化」を実現したもので、競争が激化しつつある宅配ピザ業態からの脱却を図るための「攻めの一手」であるとも言える。
なお、世界的に見ると、ピザハットがピザチェーン業界1位なのに対し、ドミノピザは業界2位。両社ともに世界50ヶ国以上に出店している多国籍企業で、こうした両社の熾烈な覇権争いが繰り広げられているのはなにも日本だけの話ではない。