かつての「カオスな電脳街」はいま。安売り家電量販店に押され、苦戦続くタイ「パンティップ・プラザ」
さらに、今月11月頭に再度足を運んでみた。入居店舗数はほとんど変わっていない。むしろ、9月にはあった店が撤退しているなど、やはり客足は芳しくないようである。莫大な費用と約18か月の時間をかけて結局パンティップはいまだ復活はしていない状態にある。テナントの従業員に話を聞いても「客はかつてほどは来ていないんだ」と首を振る。長い目で見ればまだどうなるかわからないが、入居テナントには焦りもあって、ほかの商業施設にある家電量販店よりも値引き額やサービスが大きかった。
例えば、Surface3の64GB版は量販店もパンティップも表示価格は同じだ。取材時でSurface3は18900バーツ(約5.6万円)。パンティップはそこから3000バーツ(約0.9万円)値引きの上、5190バーツ(約1.5万円)の純正キーパッド(タイプカバー)と自宅で使用できる約5000バーツ相当(約1.5万円)のドッグステーションのセットがあり、本体と合わせて20490バーツ(約6.1万円)で販売していた。
日本でSurface3は64GB の4G LTE+Wi-Fiモデルで88344円(メーカーサイト参照)。Wi-Fiモデルは73500円(アマゾン参照)となる。これはあくまでもタブレットだけの価格で、タイはWi-Fiモデルのみしかないにしても、キーパッドのセットが値引き前で約7万円と安い。OS自体は英語バージョン、キーパッドも日本と規格が違うため使い勝手がやや違うというのを差し引いても、タイの方が手を出しやすい値段設定になっている。
ほかのメーカーで見てみると「LENOVO YOGA 900S」がタイでは49990バーツ(約14.9万円)で、日本では21.6万円だ。やはりタイの方が安い。スペック表からわかる違いはせいぜいCPUくらいで、日本では「インテル・コアM5-6Y54プロセッサー」を、タイ向けは「インテル・コアM7-6Y75プロセッサー」を使用している(そのため、商品名は同じでも厳密には型番が違う)。同年に発売されたCPUなので大きな性能差はないみたいなので、Surface3同様にインストールされているOSが英語版で、キーのアットマークなどの位置が違うという点はあるにしても、今タイはIT製品が買いやすくなっているのだ。
ただ、価格はパンティップでも家電量販店でも似たような設定なので、家電量販店がパンティップに値引き合戦を挑んできた場合、パンティップにアドバンテージが今はない。バンコクの秋葉原もしばし苦境が続きそうである。
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<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)>
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たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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