またしても離脱国を生み出すことになるか!? EU加盟国が不安視する「レンツィの賭け」

オバマの選挙アドバイザーを雇ったレンツィ

 そのポピュリスト顔負けの戦略が功を奏したのか、現段階では国民投票の賛否はほぼ互角と予想されているという。もちろん、まだどちらに票を入れるか決めていない人も15~20%いると予測されている。そのため、レンツィも手を緩めていない。  レンツィ首相は国民投票の賛成勝利キャンペーンに向けてオバマ大統領の大統領選挙でアドバイザーとして活躍したジム・メシーナ氏と契約した。(参照:『El Confidencial』)  テレビ討論にも参加して、この改正の必要性を説き、報道メディアにも彼の記録になるほど彼のことが取り上げられるようになっている。  また、ワシントンへの訪問も意識してプラニングした。米国政府のオバマ大統領を始め、政府要人と会見するためである。その狙いは、彼の存在感をイタリア国民に伝える為である。EUでも、また米国政府ともレンツィは重要人物として見做されている、というのをイタリア国民の前にアピールする為である。最近ではベルルスコーニ元首相以後、イタリアの首相が世界で注目された人物は登場していない。10月17日にホワイトハウスでの晩餐会は最高儀礼のそれが用意されたという。オバマ大統領夫妻とレンツィー夫妻を囲んでのイタリア料理に、ハリウッドで活躍のロベルト・ベニーニ、米国でも評価の高いイタリア映画監督パオロ・ソレンティーらを始め、イタリアの政界、司法界など幅広く著名人がレンツィ首相によって招待された。翌日は国務省でバイデン副大統領とケリー国務長官との昼食が用意された。(参照:『LA VANGUARDIA』)  この僅か一日半の出来事が、すべてイタリア国民の前に報道されるのをレンツィー首相は狙ったのである。そして、国民投票に賛成すれば、レンツィは今後もイタリアの為に世界で活躍するということを訴えたいのである。反対が勝利すれば、彼は政界から姿を消してしまい、イタリアを国際的にアピールする政治家がいなくなるということを国民に伝えたいのである。
次のページ
レンツィの賭けはユーロの命運も握る
1
2
3
4
5
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会