日本が敗北したオーストラリア潜水艦商戦。いまだ余波やまず

豪国防省幹部だったDCNS現地法人トップ

 オーストラリア国内では、「潜水艦契約の金額は高すぎたのではないか」という声も止まない。  2016年9月に入っては、コスト高と改造設計への懸念を示す経済人有志らの全面広告が新聞に掲載されている。  その広告には、「ドイツでも日本でも、少なくとも3割は割安な価格で、最先端技術の既存ディーゼル稼働潜水艦を選択することもできたのに、非常に複雑な選択肢を選んでしまった」と書かれている。  また、広告を出した経済人有志はラジオインタビューで「原子力潜水艦を設計し直し、わざわざディーゼル推進に載せ替えて使うなんて馬鹿みたいだ。世界の笑いものになる」とも語っている。  豪海軍から不許可になったうちの1枚は、DCNSオーストラリアのCEOショーン・コステロが、以前に豪国防省で働いていたときのものだ。白いワイシャツ姿のショーンが、当時のジョンストン国防相と共に、豪空軍基地でFA-18Fスーパーホーネットのコックピットを覗き込んでいるとい写真だ。  この写真が撮影されたのちに、ショーン首席補佐官は国防省を去り、退職から4か月後、DCNSオーストラリアのCEOに就任。潜水艦大逆転の立役者となったのだ。  豪州の公務員に課せられた民間就職への規定では、「疑わしいまたは実際の利益相反を避けるべき」とある。豪海軍はおそらくはショーンの過去の経歴をあまり取り沙汰されたくないのだろう。  潜水艦は急浮上すると海面を突き抜け、周辺に大きな波を立てる。余波は落ち着きそうにない。先行きはまだまだ不透明だ。 <取材・文/沢木サニー祐二> 【沢木サニー祐二】 オージー文化評論家。1965年、茨城県生まれ。国際調停人。大学で心理学を専攻後、講談社に入社。編集者として『週刊少年マガジン』、『科学図書ブルーバックス』などを手がける。94年に退職後、オーストラリアの独立移住ビザを取得、現在までシドニーに在住。現地でカンタス航空機内誌の副編集長を経て、編集プロダクションを運営。月刊誌やガイドブック製作などに携わりながら、移住・資産運用・法務サポートなどを行う。日本経済新聞シドニー支局現地記者(2013-15)、ニューサウスウェールズ州治安判事、オーストラリア全国調停人協会認定調停人、英国仲裁人協会会員。著書に『「おバカ大国」オーストラリア – だけど幸福度世界1位!日本20位!』 (中公新書ラクレ)、『潜水艦 Option J いつか浮上へ: 海外に挑もう がんばれ日本ビジネス』(KDP)など
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潜水艦 Option J いつか浮上へ

最有力候補とされていた日本は、いつから脱落したのか

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