日本が敗北したオーストラリア潜水艦商戦。いまだ余波やまず

沢木サニー祐二

豪海軍の「気遣い」

「(契約話と)日豪トライデントに直接のつながりはなくとも、読者がまるでオーストラリアが日本を打ち負かしているかのような、あるいは追い求めているかのような、そんな印象を持ってしまうことを、我々は望んでいないからです」

 豪海軍からの返答は、日本に対する気遣いがにじみ出ていた。

 申請した写真3点のうち2点は、日豪トライデント(日豪共同軍事演習)のもの。日本のそうりゅう型潜水艦「はくりゅう」が日豪海軍の艦船と隊列を組み、大海原を躍進しているものだ。

「本の内容はビジネスの交渉プロセスについてです」
「軍事的な議論をすることはありません」
「豪政府の潜水艦選定について、なにか意見をしたり、日本を選ぶように呼び起こすものでもありません」
「日本チームが将来、外国におけるビジネス交渉を成功させていくためにも検証はきっと役立つだろうと、すでに公表されている経過をまとめたに過ぎません」

 筆者はそう詳しく説明して、再度申請を行った。

 すると、豪海軍はようやく1点の写真を許可してくれた。

「この写真のほうが我々にとっても居心地が良いのです」

 申請した3点とは別の写真で、日本の潜水艦「はくりゅう」がシドニー湾に浮かんでいる1枚だった。豪海軍の艦隊や潜水艦は写っていない。

 豪海軍の対応に決して強硬な意味合いはなく、どちらかといえば親切なくらいに感じられた。こちらの意図を組んで、出来る限り対応してくれている。

 ただ、微妙な問題だけに、神経をとがらせ、ひどく慎重になっている気がする。ふだんの豪政府関連の写真許可ではあまり聞かないくらいの細かさだった。

 ここまで慎重なのには理由があった。オーストラリア現地では、潜水艦開発問題の「余波」が続いていたからだ。

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豪潜水艦開発問題の「余波」

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潜水艦 Option J いつか浮上へ

最有力候補とされていた日本は、いつから脱落したのか

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