この構想を実現させるために、マスク氏は大きく4つの鍵を挙げた。「完全に再使用できるロケットと宇宙船」、「地球周回軌道での推進剤再補給」、「火星での推進剤の生産」、そして「最適な推進剤の使用」である。
「完全に再使用できるロケットと宇宙船」というのは、一度打ち上げたロケットを回収して、メンテナンスや推進剤の補給を行った後にもう一度飛ばす、旅客機のような運用を行うということで、これにより打ち上げコストを大きく引き下げる狙いがある。人類を月に送ったアポロ計画でも、現在NASAが考えている有人火星探査でも、ロケットや宇宙船などはすべて使い捨てる。しかしそれでは毎回新しいロケットや宇宙船を建造する必要があるため、コストはなかなか下がらない。
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ロケットは再使用することで運用コストを低減させる Image Credit: SpaceX
「地球周回軌道での推進剤再補給」は、火星に行くまでに必要な推進剤を、人が乗った宇宙船とは別に打ち上げるということである。アポロ計画では、ロケットを地上から宇宙へ打ち上げ、月へ向かう軌道に乗せ、月に着陸し、さらに地球に帰ってくるまでに必要なすべての推進剤を、一度に打ち上げていた。そのためにサターンVという巨大なロケットが必要だったが、もし火星でも同じ方法を取ろうとすると、ロケットはさらに巨大な、途方もないほどのサイズになってしまう。
そこで人が乗った宇宙船と、その宇宙船が火星へ行くのに必要な推進剤を積んだタンカーとを別々に打ち上げて、地球の軌道上で両者をドッキングさせ、宇宙船はタンカーから推進剤をもらい、そして火星へ向けて旅立つ、という方法にすることで、現実的な大きさのロケット、宇宙船で火星まで行ける。もちろんロケット、タンカーや宇宙船は再使用ができるため、コストが大きく跳ね上がることはない。