一方の中国についてはどうか? スペイン及びラテンアメリカの政治・経済・社会についてジャーナリストらが集まってのブログ『
Rebelión』に寄稿された、中国研究家でスペイン・ガリシア協会の部長チュリオ・リオ氏の指摘が興味深い。
”中国の投資は世界レベルで早いスピードで増加して来たが、何故かキューバ(への投資)はいつも通り過ごされて来た。その代わりに借款を供与し、その返済の延長などで対応して来た。つまり、これまでは、キューバへの中国からの全面的な取り組みは存在しなかったのだ。
しかし、ブラジルとアルゼンチンが(欧米寄りの)政権に交代し、ベネズエラは政治不安にある。よって、中国の戦略上において、キューバの存在は重要性を持つようになってきた。これまでは、キューバの資源などに焦点が当てられていたが、インフラの開発などに双方の発展の為の共通点を見出すことが出来るようになったのだ。
また、キューバと米国の関係が改善されたことや、プーチン氏が2014年に訪問したことなどもあった。そして、訪問したばかりの安倍首相の日本とは(中国は)戦略的ライバルだ。EUも対キューバとの関係において変更が見られるようになっている。これらの要素はどれも中国にとって無視できないことである。その意味で、李首相のキューバ訪問は注目される。そして、これまでの躊躇した対応の終わりを意味し、相互に伝統的で良好な関係を維持している中で真剣に成長への取り組みを実行する時が来たようだ”
リオ氏の指摘通り、李首相のキューバ訪問も安倍首相への対抗心もあってか、本気度が伺えるコメントが多いようだ。
9月27日付の『
Granma』では、李首相の訪問に触れて、李首相がミゲル・ディアス・カネル・ベルムデス評議会第1副議長に対し、「社会主義の建設には中国は無条件で協力する」と伝えたことを報じ、「再生エネルギー、医学開発、情報、産業発展、税関での安全確保などの分野で12項目の合意を結んだ」ことを報じている。そして、「50年以上続く友好と協力でもって、経済面のレベルを高め、キューバが新たに設けた手段とで投資が奨励されるようにする」ことが確認されたことも同紙は伝えている。
安倍首相が医療機材の提供を約束した医療分野だが、9月26日付『
eldiario』電子紙が報じるように、李首相は更にそれを発展させて「両国でジョイントベンチャー企業を設立し、そこではバイオセンサー、グルコメーター、その他分析機器の生産をする」プランを提案した。そして、「モノクローン抗体や組換えタンパク質の研究開発を共同でする」ことでも合意した。このプロジェクトは、キューバが改革の一貫として外国からの投資を求めて建設したマリエル自由貿易地区(ZEDM)で実施されるという。
しかし、9月23日付『
America Economia』によれば、中国企業の進出はまだ僅かで、投資も少ないというのもまた現実であり、日中両国ともキューバへの投資はまだスタートラインに立った状態だとキューバ側からは見られているのかもしれない。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。