「NewsPicks」擁するユーザベース社、IPO決定も残る課題

 その答えは、「第三者割当増資による持分変動利益」にあった。平たく言えば、ニューズピックス社は外部からの資金調達によってお金を増やし、そのニューズピックスの株式を持つユーザベース社が会計上の利益を得た。これによって’15年期に4.4億円もの特別利益が発生し、3.3億円の営業赤字だったユーザベース社は最終黒字になった。  早期の上場のために何としても黒字化が必要で、そのため適法の範囲でかなりアグレッシブな会計操作を行ったとも言える。同社はこの第三者割当増資に関してはプレスリリースを出していないが、何のためにどこから資金調達したのか知りたいところだ。  そもそもユーザベース社は何のために上場するのか。前述の通り今後しばらく利益の全てをSPEEDAのコンテンツ拡充につぎ込むべきフェーズであり、株主からの利益増要求に向き合う必要がある上場には向いていない。目論見書によれば 1.人材確保 2.システム開発に係る業務委託費 3.広告宣伝費  が調達資金の使い途らしい。だとするならば、ユーザベース社は総資産の7割に当たる12.7億円もの現金を持っているのだからまずはそれを使えばいい。宣伝費についていえば、そもそもSPEEDAはテレビ広告に合わないサービスなので疑問に思える。  上場が決まると、その企業の経営者に「おめでとうございます」と言うのが通例である。上場は確かにめでたいことで、特に株式を保有する関係者各位にとっては一気に資産が増える大事だが、新規の株主への責任も生じる。  最近のベンチャー企業は、脆弱なビジネスモデルのまま証券会社と組んで無理やり上場し、関係者だけが利益を得てその後会社の価値が下がる一方の所謂「上場ゴール」に走ることも多い。  ユーザベース社の上場は、意義がありかつ今後の株主を幸せにするものであってほしい。 【決算書で読み解く、ビジネスニュースの深層】 <文/大熊将八> おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会