優柔不断な上司を即決させるための「上手な聴き方」とは?

「ちょい足し」で無礼なメールにはならない

部下:「打ち合わせをさせていただきたいのですが、○月○日の14時から15時はいかがでしょうか」 上司:「あ、その時間は、避けたいな」 部下:「では、15時から16時はいかがでしょうか」 上司:「OKだ」  はじめから、限定質問を一歩踏み込んで実施していれば、2往復のやりとりで済むことになる。前出の、「最初のメールで日時指定することは失礼なのではないか」という意見に対して、最初のメール内容の表現を工夫して、失礼な度合を和らげる方法を編み出していただいた。最もシンプルで、効果がありそうだと参加者が選んだ表現が、「打ち合わせをさせていただきたいのですが、『よろしければ、例えば、』○月○日の14時から15時はいかがでしょうか」というものだ。 『よろしければ』と入れることで、相手の意向を聞いていることになる。『例えば』と入れることによって、相手の都合を尊重する意思を示している。私は、みごとな表現だと思う。そして、この手法は、どの研修テキストにも書かれていない、ごく普通のビジネスパーソンが、日々の困りごとに直面する中で、工夫して編み出した方法だ。現場のビジネスパーソンの試行錯誤こそが、スキル向上を実現するすばらしい事例だ。  そして、限定質問というたったひとつのスキルを駆使したり、一言の表現を追加したりするという、パーツスキルを身に付ければ、言動を変えることができる典型例なのだ。 ※「限定質問」のスキルは、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月刊)のドリル20で、セルフトレーニングできます。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第13回】 <文/山口博> ※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。 【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。国内外金融機関、IT企業、製造業企業でトレーニング部長、人材開発部長、人事部長を経て、外資系コンサルティング会社ディレクター。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの普及に努める。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日経ビジネスセミナー講師(2016年)。日本ナレッジマネジメント学会会員。日経ビジネスオンライン「エグゼクティブのための10分間トレーニング」、KINZAI Financial Plan「クライアントを引き付けるナビゲーションスキルトレーニング」、ダイヤモンドオンライン「トンデモ人事部が会社を壊す」連載中。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。長野県上田市出身
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