安居酒屋の「生」はなぜまずい? そこから見える業界の課題

平野和之

ビールに品質を求めるのであれば、当然であるがしかるべき場所を選ぶべきだということ

定義が曖昧な「樽生」

 デフレ経済の突入とともに発泡酒が登場してからというもの、「飲み放題の生ビールはおいしくない」、「臭う」などの声が聞こえてきた。「発泡酒や何かを混ぜているのではないか?」という疑念が席巻した。

 筆者はこの問題について、いろいろな角度から業界関係者に取材をした。まず、生ビールの定義は「熱処理をしないビール」を言うが、発泡酒も同じく加熱処理をしない。だからといって、加熱処理をしない発泡酒を「生ビール」と言ったら偽装になってしまうが。しかし、「樽生」などと表記するのは問題がないわけである。

「この15年間で発泡酒はおいしくなりましたから、普通に樽から出されたジョッキで飲めば気が付かない人が大半でしょう。仮にわかる人がいて突っ込まれても、『これがうちの生です』と言いはれば良い。そもそも、居酒屋に卸しているのが発泡酒ばかりの店もありますから、そうした居酒屋の飲み放題や生ビールが、発泡酒であることはビールメーカーと卸問屋が一番よくわかっていますよ。もちろん、今はガバナンスが強化されて少ないとは思いますが」(酒類卸の元社員)

 また、生ビールを提供する飲食関係者らに聞くと、「うちの生ビールは発泡酒です。発泡酒では?と言われたことは一度もありません」という人もいる。確かに、発泡酒をビールのようにして出す店は存在するようだ。

 もっとも、大手居酒屋チェーンや中小オーナーに聞くと「そんなことやって発覚すれば、口コミで客がいなくなりつぶれますよ。顔が見える個人店でそれをやるときは、すでに経営が苦しい時だと思います」と話すこともあり、「樽生」などと称してビールではなく発泡酒を出すのは、ひとえにその店の姿勢によることになりそうだ。

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ブラックな職場環境こそが「生」をまずくする要因!?

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