邦人増加で弁護士ニーズが高まるタイ。日本人で弁護士事務所経営に乗り出した男を直撃

タイで弁護士が有効な理由

取材時にニティラット・アピバーンチョン法律事務所にいた弁護士たち。合計で20名の弁護士を抱える。金丸氏は左から3人目

「タイでは弁護士になれるのはタイ国籍保有者のみですが、弁護士事務所の経営は外国人でも可能です。私が経営に携わる『ニティラット・アピバーンチョン法律事務所』は有名弁護士のワンチャナ氏を始め、20名以上の弁護士を擁しております」  ワンチャナ氏は弁護士歴17年のベテランで、外国人が関係するトラブル解決を得意としている。ある年にはバーレーン人が殺人容疑で逮捕され弁護。きっちり無罪にしたことでバーレーン大使館からは厚い信頼を受けている。また、タイ人の事件でもテレビで取り上げられるような大きな案件を数多く扱い、富裕層の間ではよく知られた人物である。  ほかにもニティラット・アピバーンチョン法律事務所には刑事事件、民事、商法など、それぞれを得意分野とする優秀な弁護士ばかりが揃う。会社設立もタイでは外国人にはハードルが高く、そういった業務も引き受けているという。

金丸氏とタイ人富裕層に有名な弁護士ワンチャナ氏(右)。外国人が関係する案件に強い

 ワンチャナ氏がタイでの弁護士利用のコツを話す。 「とにかく、なにか起こったらすぐに弁護士です。現場で、ですよ。タイではその場で示談にすることは多くのケースで可能です。警察官が現れ調書を取られると、今のタイでは警察署長でもその事件を上手に処理することが難しいので、その前に示談を済ませるべきでしょう」  タイはアジア版EUである東南アジア諸国連合(AEC)の中心的な存在である。そのため、法律やモラルをワールドスタンダードへと急激に舵切りしなければならない立場にあり、先進国同様にトラブルが公になるともう誰にも止められない。裁判までいってしまえばそれこそ莫大な損害賠償金を払わされる可能性もある。弁護士料、その場での示談金は裁判までいったことを考えれば格安で済むというのだ。  しかし、人はなかなか悪い習慣から足を洗うことは難しい。タイでは外国人同士のトラブルや面倒な案件には警察が動かないこともいまだにある。その点に関してワンチャナ氏は力強くこう付け加えた。 「タイでは警察が取り扱わない刑事事件を弁護士が捜査し、告発することもあります。諦めてはいけないということです」  最近、タイ王室の名を騙って人身売買をしていた女性が逮捕された。この女性の夫が警察幹部であったことから、被害届があっても警察はなかなか重い腰を上げられなかった。そこである弁護士グループが動き出し摘発に至った。タイでも弁護士は強い存在なのである。
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甘い考えの日本人の多さ
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