三菱自動車、不正燃費問題に揺れる自動車業界の気がかりな指標とは?

 不正を行ったもう1社であるスズキにも近い構造がある。同社も研究開発費以上に、広告宣伝費を露骨に増やしていた。その額は約300億円にものぼる。 ⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=104924  いまや良い製品を作ればそれだけで売れる時代というわけではないが、とにかく製品をよりよく見せて売り込むべく広告宣伝にたくさんの予算を割き、肝心のより優れたモノをつくるための研究開発に十分お金を回していなかった2社の経営戦略には問題があったと言わざるを得ない。

成長の踊り場にある自動車業界

 ところで、売上に占める割合を考えれば三菱自、スズキほど高くないものの、その他の自動車メーカーも莫大な広告宣伝費を計上している。前掲した「広告宣伝費の多い企業ランキング」も「増やしたトップ100」も上位はクルマ関係の会社ばかりだ。日産、トヨタ、三菱自、マツダ、スズキの5社だけで過去4年間でなんと1591億円も増えた。  自動車業界はここ数年の「アベノミクス」の恩恵をもっとも受けた業界の1つであり、円安を背景に、’12年頃からどんどん業績を伸ばし、利益を倍増させてきた。しかし、スズキと三菱自はここ2年ほど利益が横ばいであり、伸び続けていた日産、トヨタ、マツダも円高の影響で、ついに今期は減益。業界展望は踊り場にあると言える。  外部環境に目をやれば、IT企業が次々と自動運転の市場に参入し、自動車の基幹部分を握ろうと猛威を奮いつつある。日本の家電とは異なり、自動車は生産における部品の複雑なすり合わせ作業(インテグラル)が残っているためコモディティ化が進まず、新興国のメーカーの安価な製品に日本メーカーがシェアを根こそぎ奪われることもなく、近年も世界で戦える業界であり続けたが、正念場を迎えている。
次のページ
メディアと自動車メーカーの近すぎる距離感
1
2
3
進め!! 東大ブラック企業探偵団

ニッポンを救うホワイト企業はここだ!!

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会