スペインでテロリストの容疑で拘束された人物の中で〈45%はスペイン国籍を有し、41%はモロッコ人〉だという調査結果がスペインの王立エルカノ協会(Real Instituto Elcano)より報告されている。しかし、この報告によると、〈スペイン国籍をもっている者の6%だけが本来のスペイン人で、残りの51.7%は移民1世、そして42.2%は移民2世〉という内訳になっている。即ち、スペイン人としてテロの容疑で拘束された者の殆んどがスペインに在住している間にスペイン国籍を取得した移民者だということである。(参照「
El Mundo」)
この報告の中で見逃すことが出来ないのは、〈拘束された者の35%はテロ攻撃をする意思をもっていた〉ということである。更に、〈拘束された者の6割はセウタで生まれた〉ということも判明している。セウタはアフリカ大陸北部に位置しているスペイン領自治都市である。また、拘束された者の〈23.5%はイスラム国に参加した経験をもっている〉という。
〈2013年11月から2016年4月までにスペインを出てシリアかイラクの戦闘に加わった者は160人。29人が死亡し、20人はスペインに帰国している〉ということも同報告にある。
スペインの地中海を挟んだ対岸にはマグレブ地域がある。チュニジア、アルジェリア、モロッコの3カ国を包括した地域のことである。この地域がまたテロリストの巣窟だということである。その意味でもスペインは地理的にもテロに狙われ易い位置にあるということでもある。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。