「そこでアメリカはドル高の調整、つまりドル安へと誘導させる『上海合意』をG20で交わしたとの観測が高まっています。上海合意が実際にあったかどうかはそのうち明らかになるでしょうが、その後の動きを見ると、ドル安誘導的な発言が目立ちますし、実際に対円を中心にドル安が進んでいるのが何よりの証拠でしょう」
しかし、アメリカは昨年12月に政策金利を引き上げ、ゼロ金利から脱して、今夏の追加利上げの可能性も高まっている。ドル安誘導と利上げ。矛盾する動きのようにも思えるが……。
江守 哲氏
その疑問に対し、「では、過去のデータを見てみましょう」と、切り出すのはエモリキャピタルマネジメントの江守哲氏だ。昨年末から円高トレンドへの転換をいち早く予想し、見事に的中させた人物である。
「その予想を立てるうえでの根拠のひとつにしたのが、『過去にアメリカが利上げした後、為替レートがどう動いたのか』というデータなんです。過去3回の米利上げ後の値動きを見ると、いずれも円高が進んでいます。為替市場は先々を織り込んでいくため、利上げのウワサが流れるとドルが買われ、実際に利上げすると売られやすくなるためです。直近では’04年6月の利上げ前後で13円23銭の円高が進みましたし、過去3回の利上げ後の円高幅を平均すると23円56銭にもなります」
アメリカが利上げに踏み切ったのは昨年12月16日だ。その際には1ドル121円台だったが、そこから23円56銭下がるとすれば97円台という数字が出てくる。
「もうひとつ注目したいデータがあります。過去のトレンドのデータです。1976年に変動相場制に移行してから、面白いことに円安トレンドの期間がいずれも、ほぼ3年なんです(図①)。今回のアベノミクス円安が始まったのは’12年。すでに3年が経過しましたので、もう円安トレンドは終わったと見ていいでしょう」
⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=102301
変動相場制移行後の円安トレンドを見ると、おおむね3年前後で終わっている。アベノミクス円安開始からすでに4年弱。円安トレンドはもう終わっている
では、過去の円高トレンド時の相場動向をデータで振り返ってみよう。
「大きな円高局面は過去6度あります(図②)。その平均期間は43か月、下落率の平均は40%です。今回の円安高値は125円でしたから、そこから40%下げるとすると75円。これはアベノミクス開始前後の水準です」(江守氏)
⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=102302
過去の円高トレンドから類推すると、高値125円から40%の下落=75円まで円高が進む可能性も