当初ドイツ政府は企業連盟の支持もあり移民・難民の多量の流入を支持した。若い労働力を安価で雇えることを期待したからである。戦後のドイツの発展もトルコからの移民の安価な労働力に負うところが大いにあり、今回の移民•難民の流入からも同じような期待をした。しかし、彼らの中にテロリストも混じっているということが判明してからは、移民・難民の受け入れを容易に展開させたメルケル首相もその受け入れ体制の修正を余儀なくさせられている。本人もテロリストが移民・難民の中に偽装して入国していることを認めるようにもなっている。
当初は多くのドイツ国民が移民•難民の入国に歓迎振りを見せていた。しかし、現在もそれを支持しているのは〈国民の41%で、28%は彼らの入国に終止符を打つべきだ〉という意見だ。〈1年前まで36%のドイツ人が移民・難民がドイツ文化に順応することが重要だ〉と表明していた。それが現在は〈53.5%のドイツ国民がその重要性を感じている〉という。(参照:『
La Gaceta』)。
フランス人ジャーナリストでテロ組織の中に6か月潜伏した人物が次のようなことを語った。「彼らは世の中を良くしようという望みもない」「彼らは先を失い失望して自殺をしようとした洗脳され易い若者だ」「ISが存在している時代に生を得たというのが不幸だった」「彼らは何かを求めていた。そしてISを見つけたということだ」と語った。(参照:『
El Espanol』)。
希望を失った若者たちがテロ組織に流れ、国難を逃れようとした移民と現地住民の間に軋轢が生まれる。負の連鎖は果たして止められるのだろうか。
<文/白石和幸 photo by
yeowatzup via flickr (CC BY 2.0) >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。