しかし、常に財政難に喘ぐSRTは逆に外国人、特に日本人には人気がある。例えば日本人の鉄道ファンからすると「まるで古き良き時代の日本国鉄の雰囲気がそのまま残っている」のだそうだ。
旧態依然とした運行システムで走るので、日本人からは「まるで昭和30年代」とさえ言われ、ホアランポーン駅は往年の上野駅を彷彿とさせるものがあるという。
日本人鉄道ファンがSRTに魅了されるほかの理由に、かつての日本の車両が現役で走っていることも挙げられる。戦前はドイツの機関車がよく使われていたようだが、戦後、タイ米を地方からバンコクへと大量に輸送するため、連合国側に接収した日本の機関車がタイへと譲渡された。このときに輸送された米の多くが敗戦後の日本の食糧難に充てられたという。その後、日本の機関車を気に入ったタイはタイ米と引き換えに日本の蒸気機関車を1948年と50年にそれぞれ50両ずつ注文したという。
今年6月25日のホアランポーン駅100周年に現れたC56型蒸気機関車
この戦前戦後にタイで活躍した蒸気機関車のC56やパシフィック型などが、今もしっかりと整備され、何両かは走行可能な状態にあり、 毎年、国王陛下や女王陛下の誕生日、3月26日のタイ鉄道の日など年4回、ホアランポーン駅から特別列車としてアユタヤなどを往復するのだ。