――夏に酸味というのはわからないではない。しかし、そこでトマトカレーを持ってくるとは大胆すぎやしないか?
「社内でも味の方向性で苦心したようです。トマトカレーをカップめんとしてアレンジした時に、どのような味がふさわしいのか。1回目の試食後、商品開発グループからは『桃太郎トマトのようなトマトの自然な甘みと酸味を出してほしい』と改良の要望が出ました。とはいえ、『自然な甘みと酸味』といったバランス感覚というのは難しいものですから、エースコック様には何度もやり直していただくことになってしまいましたね。特にフレッシュな酸味は再現が難しかったため、乾燥スープだけでなく、袋ペーストでの提供に行きつきました」
既存のファンがいる以上、イメージからかけ離れた味にはできないわけだ。
「松屋の店舗で提供する商品は、弊社の商品開発グループの試食で承認を得る必要があります。今回の商品も同様にしています。このほか、当社の無添加・健康路線を出すため、“人工甘味料不使用”もお願いしており、製造原価があがってしまったとは思います。エースコックさんには、何かとご苦労をおかけしてしまっています」
突飛な新商品ながら、押さえるべきところは押さえているということか。
――ところで、夏の恒例といえば、店舗でのトマトカレーはいつごろになるのか?
「トマトカレーなのですが……夏の恒例のトマトカレーの導入は予定されていないんです。すみません! 6月は、創業50周年記念月なものですから、3週連続・定食500円キャンペーンを行う予定なんです。このキャンペーンひとつに賭けて注力するということで、今年はお休みになってしまいました。今年の夏はお家でトマトカレー味ラーメンを味わっていただければ」
予想の斜め上をいく松屋の次なる施策が楽しみである!
<取材・文/江沢 洋>