買収となれば敵対的と友好的なものもあれば、業界再編やグループ事業再編のほか、業績不振企業の救済型のようなパターンもある。人気アナリストの熊谷亮氏は、「再編が起きやすいのはピークが過ぎた不人気業種」と指摘する。
「港湾運輸大手で商船三井の子会社である宇徳、三菱電機系の設備工事業者である弘電社などは、どちらもPBR1倍割れで割安に放置されています。親会社による子会社化の可能性もあるでしょう」
また、事業再編的な合併は、業界内で噂話が上がりやすい。
「博報堂グループでは、ネット広告企業のDACの力を強化したい方針があるようで、東証2部のメンバーズやマザーズのユナイテッドあたりを統合するのでは、という噂が聞こえてきます」(株式ジャーナリスト・竹中博文氏)
業績不振企業にも買収の手は忍び寄る。市場ではアンジェスMGの行方に関心が集まっている。
「資金不足で増資の繰り返しですが、研究で培った創薬ノウハウは貴重で、製薬大手による買収説が何度か流れました」(大神田氏)
さらに、資産3.4億円の億超えトレーダー・キクチ氏は、大株主の動向からこんな予想をする。
「少し前まで経営危機だった学習塾の市進HDの株を、enaという別の学習塾の経営者が大量取得しています。同業者が買うからには、今後、何か動きがあるのかも? 市進HDは不採算事業を廃止したりリストラをして業績が改善してきているのも好材料です」
かぶ1000氏も大株主の動向に注目する。茶や酒のエキスなど粉末系素材の製造・卸を手掛ける佐藤食品工業の株を社長が20%以上持っていて、現在91歳。MBOもありえるかもしれない。
買収は株価の“歪み”を狙われるものだが、自社の株に“歪み”が生じているケースがある。独自の視点で注目銘柄を挙げたのは、資産1.7億円のAkito氏だ。
「伊藤園は普通株のほか、議決権がない代わりに配当が25%高い『優先株』を発行しています。伊藤園の株主優待も配当ももらえる。にもかかわらず、普通株は3640円に対し、優先株は1853円と異常に低いんです。優先株の配当金を上げたり優待を充実させるなど、優先株の株価を上げる何らかのアクションがあってもおかしくないと思っています。優待も配当ももらえるので、気長に持っていてもいい銘柄です」
軟調相場で増える買収。その思惑を掴めば2倍増も狙えるのだ!