「バイオマス発電」に代表されるようなエネルギー資源としても、同様な問題に直面している。
ただ、先出の榎本氏いわく、部分的にうまく活用している地域も出てきているという。
「例えば宮崎県や三重の松阪市などは、行政、民間企業、研究者、森林組合などがうまく噛み合っており、バイオマス発電所と製材所を組み合わせた木材コンビナートの設立や、“スギ畑”とでもいうべき生産効率の良い育林から製材までの工程の合理化が実現していて、収益モデルとして成功しています。各地域の意識の差がそのまま結果として現れています。ただ一つはっきりしているのは、森林が抱えている問題に対して意識を持つ人々が増えてくることで、価格面や品質改善といった課題は必ず解決できるということです。いかに多くの人を“巻き込める”か。この点に尽きると思います。消費者、つまり個人が動けば、大企業や自治体、国も動く。少しくらいの差なら日本の木材を使ってあげようという、1人1人の小さな気付きに日本の森と林業の未来はかかっています」
林野庁が平成23年に発表したマニュフェストの中には、「10年後の木材自給率50%以上」という文字が強調されている。現在その数値は30%前後で推移しており、最悪の状況からは抜け出しつつあるという意見も聞こえる。まだまだ根本的な解決に至るまでには時間を要しそうだが、宮崎県、三重県だけでなく意識の高い地域も増えてきており、企業、個人といった単位からでも問題意識は浸透してきている。人工林と国産材を取り巻く問題が少しずつ顕在化しつつあることを考慮すれば、好転の兆しは現れているのかもしれない。<取材・文/栗田シメイ>