英語圏のSNS上には「Appleは三流の会社になってしまった」「いつからアップデートはギャンブルになったのだ?」といった批判が散見されるが、アップデートによって生じる不具合は今に始まった話ではない。現に今年3月22日にiOS 9.3が公開された直後にも、一部のiPhoneでフリーズやブラウザのリンクが機能しないといった不具合が報告されていた。ここで無視できないのが、「ITガジェットのアップデートは即実行すべきなのか」という問いだろう。
確かに、実利に直結するセキュリティ面での不具合はなるべくすみやかに解消するのが好ましい。今回のiOS 9.3.2にも39件のセキュリティに関する不具合の修正が含まれており、秘書機能アプリ「Siri」を使うことでロック状態でもデバイス内の連絡先や写真を閲覧できてしまうという欠陥も解消されるため、避けては通れない選択肢なのは間違いない。
だが、それ以外の主な修正点といえば、
・「メール」または「メッセージ」を使用する際、日本語かなキーボードではメールアドレスが入力できなかった問題
・辞書を使用する際の動作不全
・一部のBluetoothアクセサリでは「iPhone SE」のオーディオ品質が低下する問題・言語設定を英語にし、画面読み上げ機能「VoiceOver」の声に「Alex」を選択すると句読点や空白で別の声に切り替わる問題
・法人向けのカスタムB2BアプリをMDMサーバでインストールできなかった問題
こうして見ると、1日や2日アップデートが遅れても、致命的な問題が発生する欠陥はほとんどないことがわかる。一方で、iPadが使用不能になってしまうのは考えるまでもなく由々しき事態だ。
ただ、今回の騒動からも分かる通り、新たなアップデートに問題があれば、公開初日には浮き彫りになる。今現在手元のガジェットが問題なく機能しているのであれば、新規アップデート公開から数日は様子見するのが賢明なようだ。
気になるのは、今後のAppleの動向だ。今回の騒動でiPadが“置物”と化したユーザーの数は定かではないが、マーケティング会社・Digitimes Researchが今年3月に発表したレポートによると、iPad Pro 9.7インチモデルは今年前半だけで400万台が市場に出回る見込み。Appleユーザー全体で見れば決して大きな数ではないが、そのブランドを揺るがすには十分な不祥事だ。唯一確かなことは、次にAppleがリリースするものは新型のMacBookでもiPhoneでもなく、iOS 9.3.3だということだろう。
<取材・文/小神野真弘 photo by
Toshiyuki IMAI on flickr (CC BY-SA 2.0)>