なぜヘッドフォン型なのか?――新ランニング用デバイスの開発意図を聞いてみた

付加に合わせた音楽を自動再生

 音楽のテンポはピッチ(脚の回転数)を調節するときのツールとなり、走行のペースをキープするのにも役に立つ。Smart B-Trainerはユーザーの心拍数をリアルタイムでモニタリングしながら、トレーニングの目的に沿った心拍数になるよう音楽を自動選曲する。 「左右の耳に装着するデバイスには6つのセンサーが入っており、消費カロリー、距離、ペース(スピード)、といった11種類のログを取ることができます。心拍数はこのセンサーの一つで脈拍をとり、数値化しています」  現在、心拍トレーニングは、レースでタイムを更新するために激しいトレーニングをするような中上級ランナーが利用することが多く、一般向けにはまだ普及していない。ランニング用ウエアラブルデバイスで心拍の測定機能があるものは、まだごくわずかだという。 「目的によって適した負荷は違います。適切な負荷になるように心拍数を保つことで、運動効率の良いトレーニングを行うことができます。例えばダイエット目的でランニングを始める場合、激しい負荷をかけても効果的に脂肪が燃焼しません。カロリー消費に最適な負荷は、話ができる程度のペースです」  ランニングはシューズさえあればすぐにでも始められる手軽さが魅力だが、その反面継続していく難しさもつきまとう。 「走り始めたばかりの人がはりきって激しい走り込みをしたために、きつさを必要以上に感じてしまい短期間でやめてしまうこともあるようです。その点、心拍トレーニングなら目標に沿った速さが設定され、しかも音楽でナビゲートしてくれる。結果としてトレーニングのつらさが軽減され、習慣化しやすくなります」  個人のランナーが目標を達成しやすいように、付属ソフトのトレーニングメニューも充実させた。プレミアムトレーニングメニューは、プロアスリートの指導歴も豊富なプロランニングコーチの金哲彦氏が監修。ダイエットからフルマラソンまで、目的に応じて1カ月半~3ケ月のスパンでスケジュールが組まれている。  音楽プレーヤー開発のノウハウと、心拍を測るセンサー技術が、ランニング習慣を最適化する形で一体化されている。音楽をコーチングの要素として組み込んだソニーならではの製品は、街を走る市民ランナーの光景を変えるのか。 <取材・文/石水典子
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