国連「表現の自由」特別報告者が語る「日本のメディアの独立性に暗雲」

日本のメディアは政府に対して「いや、違う」と反論する力が弱い

 ケイ教授の批判の矛先は安倍政権だけでなく、日本のメディアにも向けられた。 「日本のメディアの構造そのものが、政府に対して必ずしも抵抗しないという問題があります。例えば記者クラブは、大手メディアや政府に都合がいいものとなっています。外国メディアや雑誌、フリーランスが排除されているなど、記者クラブはアクセスを制限するツールであり、市民の知る権利を制限しているものです。  ジャーナリストの役割として、見張り役、WATCH DOG(番犬)であるべき。政府から聞いた話をそのまま流すのではなく、議論を起こすべきです。ところ が日本のメディアは、政府に対してもの申すということをしない。メディアが報じたことに、政府が反論することもあるでしょうが、それに対してさらにメディアが再反論することが必要です。それこそがジャーナリズムの神髄。日本のメディアは、政府に対して『いや、違う』という力が弱まってしまっています」(ケイ教授)  今や国際的にも懸念されている日本の「報道の自由」。今年4月に公表された「国境なき記者団」の世界報道の自由ランキングでも72位と、「報道の自由に問題がある」カテゴリに入れられてしまった。かつて民主党・鳩山政権の時は11位だったのだから、まさに大暴落だ。気がつけば中国や北朝鮮のような抑圧的な国になってしまわないよう、もっと危機感を持つべきだろう。<文/志葉玲(ジャーナリスト)>
戦争と平和、環境、人権etcをテーマに活動するフリージャーナリスト。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、共著に『原発依存国家』(扶桑社)、 監修書に『自衛隊イラク日報』(柏書房)など。
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