被災地における仮設から公営住宅の転居で、今後さらに孤独死が増える!?

南相馬市原町区の災害公営住宅

南相馬市原町区の災害公営住宅。プライバシーが確保される反面、平屋の仮設住宅と違って住民が交流しづらい

 東日本大震災被災地では、仮設住宅からの移転が本格化している。2016年3月の段階で、東北全体の仮設住宅の空室率は40%。仮設住宅での生活者が減り、一見被災者の生活再建は順調なように見える。しかし、東北の復興に関わる関係者の間に楽観論は少ない。 「今後、孤独死が増えるのでは」と警鐘を鳴らすのは、福島県南相馬市と宮城県気仙沼市の仮設住宅で活動するNGO「日本国際ボランティアセンター」(JVC)の白川徹さんだ。 「警察発表では、仮設住宅で孤独死した人の数は東北3県あわせて202人にのぼっています。今後、自宅再建や復興公営住宅への移転が進めばさらに数が増えるかもしれません」(白川さん)

孤独死の原因は「行政区コミュニティ」の分断

 東北の沿岸地域では、住民の多くは『行政区』という100世帯ほどのコミュニティの中で生活をしている。 「仮設住宅で孤独死が多い要因は、仮設住宅入居の際に行政区が考慮されず、コミュニティがバラバラにされたことです。JVCが2011年8月に仮設で調査を行った際、住民の多くは1か月以上同じ暮らしていても『隣の人と挨拶を交わしたこともない』といった人たちが散見されました。  アパートやマンションに住む都市生活者からすれば『何が問題なんだ』と疑問に思うかもしれませんが、そもそも生活のスタイルが違うのです。東北沿岸では行政区のコミュニティ単位で相互扶助のもとに暮らしているケースが多く、コミュニケーションの基盤になっています。それがバラバラにされてしまえば、住民が孤立し、結果として孤独死を招くのは当然の結果です」(同)  JVCは南相馬市で地元団体と協力して仮設住宅の集会所で、住民が自由に利用できる「サロン」を運営してきた。目的はサロンでの交流活動を通して仮設に“仮のコミュニティ”を作ることだという。 「サロンの存在のおかげで住民の交流も増し、これまで孤独死を出さずにすみました。ですが、いま問題になっているのは仮設を出た後のことです。仮設を出た後、多くの住民は市や県の運営する災害公営住宅に移り住みます。公営住宅は抽選で入居が決まるため、仮設に入居したばかりのときのようにコミュニティがまたバラバラになってしまいます」(同)
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公営住宅のコミュニティづくりは住民に丸投げ
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