個人が受けられるマイナス金利の恩恵の中で、桁違いに大きいのが住宅ローンだ。前出の深田氏はこう話す。
「1.9%以上の固定金利で住宅ローンを返済中の人なら、借り換えで金利負担を軽減できます。現在、メガバンクでも10年固定の住宅ローン金利は0.9%と史上最低の水準。今、10年固定や全期間固定に借り換えれば、数百万円の利息を減らせるケースもあります」
ただし、借り換えにはローン保証料など諸経費がかかるので、借り換え前との金利差が1%以上で返済期間が10年以上残っており、残高も1000万円以上のケースでないとメリットがないこともあるという。ちなみに、変動金利はマイナス金利とは無関係の政策金利で決まるので、今後低下する可能性は少ないとか。
「変動金利で返済中の人は、固定に借り換えると少し返済額が増えますが、現在の水準で固定に借り換えれば割安な利息で今後の金利変動リスクを回避できるのでおすすめです」
返済中のローンの利息を減らす手段は、借り換え以外にもあるという。
「返済中の銀行に、金利を割引してもらえないか交渉するのです。借り換えにかかる諸経費や手間を軽減できるので、トライしてみる価値はあります」
他の銀行に借り換えした場合のシミュレーションをしてもらい、それを持って返済中の銀行に相談してみるのがおすすめだという。
「ただし、金利が有利だからといって『賃貸の予定を変えてマイホームを買おう』とか『借入額を増やして豪華な家を建てよう』いうのはNG。繰り返しになりますが、マイナス金利だからといううたい文句に踊らされて身の丈に合わない投資をすると、後で後悔することになります」
マイナス金利の最も大きなメリットは、借金の金利負担が軽くなること。投資だけでなく、現在抱えているローンの“出口戦略”についても見直しておきたいタイミングだ。
生命保険各社が販売停止・保険料値上げを決定した商品
・第一フロンティア生命
一時払い終身と個人年金保険の一部販売停止
・富国生命
一時払い終身の一部を販売停止
・太陽生命
銀行窓口販売の一時払い年金の販売停止
・T&Dフィナンシャル生命
一時払い終身の値上げや販売停止を検討中
・朝日生命
一時払い終身と個人年金の値上げや販売停止を検討
・明治安田生命
銀行窓口販売の一時払い終身の抑制
・かんぽ生命
配当金0.07%→0.01%(過去最低)、保険料10年分前払い0.21%値上げ
・第一生命
一時払い終身 予定利率0.65%→0.45%
【深田晶恵氏】
ファイナンシャルプランナー。生活設計塾クルー取締役。コンサルティングマネー情報を発信。最新刊は『定年までにやるべき「お金」のこと』(ダイヤモンド社)
【X氏】
大手生保幹部。在籍18年。6年前から本社経営企画部に配属され、新商品設計のERM(リスク管理)も担当。自社で手がける学資保険については現状維持の方針
取材・文/森田悦子 写真/時事通信社