オフショア金融センターの背景から浮かび上がるパナマ文書の「目的」とは? 闇株新聞氏語る

ICIJのパナマ文書特設ページ(https://panamapapers.icij.org/)

「パナマ文書」が世界を震撼させている。ご存じのとおり、世界中のオフショア金融センターにおいてオフショアカンパニーの設立・運営・管理を担っているパナマのオフショア法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した1150万点もの機密文書だ。その文書の情報量はなんと2.6テラバイト。すべてを印刷するとトラック1000台分にもなるという。  このパナマ文書を巡っては、すでにアイスランドのグンロイグソン首相や中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領の関係者など、多くの著名人の関与が浮上している。だが、その著名人の名前ばかりに注目が集まってしまい、オフショア金融センターの実態はあまり報じられていない。ここでは、過去に数々のオフショアカンパニーの設立に携わった経験のある闇株新聞氏の協力を得て、その実態を明らかにしていきたい。

2種類あるオフショア金融センター

 まず、オフショア金融センターには大きく2種類あるという。人口が少なく、その土地における経済活動がほとんどないオフショア金融センターと、人口も多く経済活動も活発ながら比較的低い税率や運営コストで各種サービスを提供して非居住者の経済活動も積極的に承知しているセンターの2種類だ。  前者の代表例はカリブ海のケイマン諸島(旧英国領の独立国)、英国領バージン諸島(BVI)、バミューダ諸島、バハマ諸島、オランダ領アンティル諸島とアルバ島、英国本国周辺のチャネル諸島やマン島、スペイン東南端の英国領ジブラルタル、南太平洋のバヌアツ、西サモサ、ラブアン島、インド洋のセイシェル諸島、モーリシャスなど。  後者にはシンガポール、香港、オランダ、アイルランド、ルクセンブルグ、リヒテンシュタイン、パナマ、ウルグアイ、モナコ、キプロス、バーレーン、リベリアなどが含まれる。  これらのオフショア金融センターには、それぞれ特色がある。 「バミューダ諸島はオフショア保険と航空機登録が世界最大で、BVIはオフショアカンパニー数が世界最大。ケイマンは資産運用額が世界最大で、ルクセンブルクはオフショア・ユーロ債の発行が世界最大。パナマとリベリアは船舶登録数が世界最大で、ウルグアイは政情が不安定な南米諸国からの逃避資金の受け皿になっている」(闇株新聞氏)  国際非政府組織オックスファムによると、こうしたオフショア金融センターに流れ込んでいる資金は約800兆円。世界の金融資産の8%にもなる。当然、大金持ちがせっせと節税のために利用していると想像できる。だが、実際には誰でも簡単にオフショアカンパニーを立ち上げることが可能だという。
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秘匿されるはずの実質所有者はなぜ流出した?
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