オフショア金融センターの背景から浮かび上がるパナマ文書の「目的」とは? 闇株新聞氏語る

秘匿されるはずの実質所有者はなぜ流出した?

「直接モサック・フォンセカなどのオフショア法律事務所にコンタクトすることも可能ですが、一般的なのは節税スキーム込みでプライベートバンクを含む欧州の金融機関を利用する方法。実際、モサック・フォンセカにもHSBCやクレディ・スイスやルクセンブルクのプライベートバンクなどが多数の顧客を紹介していたようです。当然、億単位の資産家が対象になりますが、オフショアカンパニーを設立するのに必要な資金は30万円程度。設立済みのオフショアカンパニーを買ってくるパターンなら、もっと初期投資を抑えられる。資本金はだいたい1ドルなので、諸経費を入れてもタダみたいなもの」  簡単に作れるうえに、決して“実質所有者”の名前は明らかにされない。 「オフショアカンパニーも法人なので当然、株主や経営者が必要。しかし、ダイレクター(経営者)やセクレタリー(業務執行者)はすべて“名義貸し”。オフショア法律事務所のアレンジのもと、名目の株主や経営者、業務執行者で登録するため、実質所有者の情報は表に出てこない。オフショアカンパニーが契約や資金調達、投資などの経済活動を行う場合も同様。実質所有者はオフショア法理事務所経由で指示を出し、名目的な経営者(ダイレクター)が形式的に行う」  にもかかわらず、今回多くの著名人の関与が明らかになったのは、情報流出元がモサック・フォンセカだったからにほかならない。要は、実質所有者が同法律事務所と交わした契約者や委任状などが、すべて流出したのだ。 「今回、流出したパナマ文書には21万4000社のオフショアカンパニーの情報が含まれていたが、その所在地は約半数が英国領バージン諸島で、4万8000社がパナマ、1万6000社がバハマ、1万5000社がセイシェル諸島。代表的なケイマン諸島が含まれていないのは、ケイマンに本部を置く世界最大級のオフショア法律事務所であるMaples and CalderとWalkersの力が強いためでしょう」
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「漏洩」させたのは誰か?
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